ぷらいべーと6
□好きです、先輩
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「はーい、もしもしぃ?」
「みぃちゃん!!大丈夫!?!?」
「え」
「熱は!?しんどさは!?コロナってすげぇだるくなる人もいるって聞くし!呼吸できない人とか!!そんな人もいるって!!苦しくない!?てかどこにいるの!?家!?1人でどんなか」
「しょーくん」
「、」
「ふふ、ありがとう、ニュース見て電話してきてくれたの?」
衝撃だった。携帯開いたら一発目に入った情報。目を疑った。関ジャニ∞大倉忠義、野原みぃ丸山隆平新型コロナウイルス感染。この文字に心臓がバクバクして気がつけば体は勝手に通話ボタンを押してた。どうしようどうしよう。みぃちゃんに何かあったらどうしよう。そんなこと俺がどうにかして何してでも助けてやりたいのにどうしたらいいんだろう。そんなこと思ったらパニックになって繋がった瞬間ひっきりなしに喋ったけど優しい彼女の綺麗な声でそれは制された。
「俺、びっくりして、みぃちゃんが感染って」
「違う違う。紫耀くんちゃんと見た?私感染してないよ?」
「え」
「感染したのは大倉くん。私は濃厚接触者だから2週間待機だよ」
クスクス聞こえた笑い声に一気に肩の荷が降りた。いやだめなんだけど。実際大倉くんがかかってるからだめなんだけど。けど俺の早とちりだったんだと息を吐いて深呼吸する。けれども濃厚接触者ってことはこれからかかる可能性は十分にあるわけで。てことは結局一緒じゃん。
「今は?症状ないの?」
「うん、熱もないし全然大丈夫だよ」
「だるさも?」
「ないない、味覚も大丈夫」
「・・はぁ、よかったぁ」
ネット社会は便利なもんでなんでも嘘か本当かわからなくてもあらゆるニュースがある。コロナも数え切れないほどの情報がありそれを聞いて全部鵜呑みにしたら怖くなるばかりだった。だからこそみぃちゃんが感染するかもしれないって考えるとどうしようもなく不安が溢れて仕方ない。何か俺にできることはないかと考えても会えることも許されなくて。みぃちゃんが得体の知れないウイルスと1人で戦ってるのかと思うと悔しい。
「・・ありがとう、紫耀くん」
「いや、俺なんもできないし、」
「ううん、電話してきてくれて、私今ちょっと救われたかも」
そう言ったみぃちゃんの声が元気がなさそうで胸がぎゅっと締め付けられた。映画で共演した時、メンバーが脱退して関ジャニ∞で大変な時だったみぃちゃん。あの涙の記者会見はすごく印象的で。本当につらそうに痛そうに苦しそうに泣くみぃちゃんを俺は見れずすぐにテレビを消したのも覚えてる。それでも彼女は現場で一切そんな素振りは見せず笑顔で誰にでもニコニコと会話をしながら撮影してた。けど少しだけ感じたことはみぃちゃんとソファーでまったりするシーンの時。機械のトラブルで少し急遽の待ち時間ができた。
(すみません!!)
(全然大丈夫です!!ゆっくりしときます!ね!しょうくん!)
(はい!大丈夫です!)
そのままぐだーっとソファーにもたれたみぃちゃんの顔が少し疲れてるように見えて俺も同じように体を倒しながら彼女と向き合う。
(・・お疲れ?)
(んー、ふふ、ちょっとね?)
そう言ったみぃちゃんがなんだかすごく今にも消えてしまいそうな感じに見えて思わず腕を掴んだのは無意識。そんな俺にみぃちゃんは一瞬目を丸くしてけどそのあと瞳を揺らしてなんとも言えない顔をして笑うから彼女の腕を引っ張って俺の胸におしつけた。
(一緒に寝よ?ちょっと疲れた俺)
(っ、)
(起きたらきっと気分も変わってるよ)
(、っ、私も、ちょっと、疲れちゃった)
そう言ってそのまま目をとじたみぃちゃん。時折聞こえる鼻を啜る音。きっと心が疲れてたんだと思う。大好きな人が当たり前に近くにいなくなって。きっといろんなプレッシャーとかいろんな感情に押しつぶされてたんだと思う。あと数ヶ月でメンバーがメンバーじゃなくなるなんて。俺からしたら考えられない気持ちだけどきっとみぃちゃんだってまだ追いついてない。感情が追いつかないんだよな。あれから一度もみぃちゃんから弱音は聞かなかった。けど時折瞳を揺らして過ごしている彼女を笑顔にしたくて。ちょっとでも気持ちを楽しくさせてあげたくて。何もできない俺なりに色んな話したりなんやかんやしていたと思う。
「映画の撮影の時もね、正直きつくて。いろんなこと話し合ったりしてたし。だからね、私の逃げ場所というか、あの時ね、紫耀くんといることが唯一気持ちが穏やかになってたの」
「っ、」
「現場に行くのが楽しみで。紫耀くんに気遣わせちゃって申し訳なかったけど、けど、いろんな話してくれたり、一緒に笑ったり、遊んだり。うん、なんだろ、すっごく救われた時間だった」
「・・、」
「今もね、やっぱりホテルに1人でいると、なんとなーく気持ちが落ちちゃってて。けど今、紫耀くんの声きいたら、うん、元気でて。撮影してた時思い出した」
「、っ、」
「ありがとう、紫耀くん」
一気にみぃちゃんの言葉に体が熱くなって。目頭も熱くなって。言葉が出てこない。そんなのこっちのセリフだった。あの撮影は俺にとってすごくすごく大切で宝物のような時間だったんだよ。みぃちゃんと過ごす時間は本当に楽しかった。ニコニコ笑顔に何回も胸がぎゅーっと掴まれて。みぃちゃんが笑ってくれると嬉しくて。一つ一つにドキドキして。そして同時に撮影中あらゆることを勉強させられて。みぃちゃんすげぇ、みぃちゃんすげぇの連発で。俺の方が救われてたんだ。忙しいグループの仕事の合間にみぃちゃんと会えるあの時間は俺のパワーの源だったというか。すげぇすげぇ言葉にできないほど大切な時間だった。
「俺、別にみぃちゃんのためなら今すぐそのホテルに行けるよ」
「、」
「誰に怒られようがそれで仕事なくなろうが、みぃちゃん笑顔に出来るんだったら迷わず今から迎うと思う」
「っ、」
「それぐらい大切で大好き」
「、っ、」
「それだけは覚えてて?」
困らせたくない。けどさ意識してよ、みぃちゃん。俺のこと好きになって。弟なんかに思わないで。可愛がってる後輩枠に俺をいれないで。
(俺のこと可愛い後輩と思ってんでしょ?ふざけんなよ、そんな生ぬるい気持ちで先輩のこと思ってねぇんだよ!!)
あの時のあの役の気持ち。本当に今ならすげぇわかる。てかあのまんま。わかりすぎてつらい。
「・・うん、ありがとう」
「絶対その待機終わったらご飯行こうね」
「ふふ、今はまだ怒られちゃうよ」
「じゃあリモート飲みしようね」
「うん、しようね」
「みぃちゃん?」
「ん?」
「大好き」
「・・うん、ありがとう、」
少し照れたように感じた声色に口元が緩んで仕方ない。彼女がすげえ人気なことも。メンバーの人と距離が近いことも。俺なんかよりもっと仲良い男友達がいることだって知ってる。けどちょっとでもちょっとだけでもみぃちゃんが俺のことを考える時間が増えますように。俺のこともっと好きになってくれますように。そう願うだけだった。
好きです、先輩。
(うっわ、たまんない、会いたい、、)