ぷらいべーと6

□メリークリスマス
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聖なる夜。やっぱり幾つになってもこの時期が近づくとテンションはあがるみたいで。街中が賑やかになるこの時期が俺は好きだ。でも俺らにとってはこの時期は色々な仕事が入ったり年末に向けての仕事に追われるから大体忙しい日になってしまう。だからこの2日間に休みがあることなんてまず普通に考えてもありえないことなわけで。他の人たちみたいにゆっくりとした過ごし方は毎年できていない。この日には大体大型音楽番組が入ることが多くて僕らもそこに呼んでもらえるようになった。その収録の間に雑誌の撮影とかも入れ込まれるからバタバタするんだけど、けどどんだけ忙しくてもこの特番に出ることが俺にはすげぇ大事。だってここにいられることはイコール彼女に会えることを示すから。だから俺的には最高なんだよ。もしこの仕事が無かったらこの時期の一緒の仕事なんて他には絶対にないから会うことなんてできないだろうし。これは俺にとっては最大のチャンス。何がなんでも今日会おうと時間を見計らって彼女の楽屋を訪れた。

「すみませーん」

「おー、」

そこにいたのは丸山くんと村上くんで。みぃちゃんいますか?と聞けばさっき出て行ったことを伝えられる。あれ、タイミング悪かったと思って引き返そうとしたけど丸山くんに「ここで待ってたら?多分すぐ帰ってくるんちゃう?」と言われ恐れ多いけど楽屋で待たせてもらうことにした。

「うちのみぃがお世話になってるみたいやなー」

「いやいや!僕がお世話になってるんで!」

「あの大変な時に映画やってたやろ?でもあの撮影はな、楽しそうにあいつも行っててん。だからほんま平野くんにはメンバーみんな感謝してたわ」

「いやほんまよな!みぃはキンプリ大好きやし!」

「そうやで?キンプリキンプリ言うてるで?」

「え、マジですか」

「マジやから気をつけや〜!うちのグループみぃに関しては怖い人らが2人おるから」

「えー!怖いんすけど!!!」

ケタケタ笑う村上くんの顔も大きな口を開けて笑う丸山くんの顔もすげぇ優しくて。あー、この人たちみぃちゃんのことになるとこんなに優しい顔するんだとかなり驚くほどだった。2人の少し怖いけどそんな恐れ多い言葉に頭を下げながら少し最近のお互いの活動について談笑させて貰っていたらずっと胸元で震える携帯。長い着信にどうしようかと思っていれば気にかけてくれた村上くんに「出てええよ?」と言われ失礼ながら携帯を手に取らせてもらう。

「はい」

「あ!やっとでた!お前どこおんねん!!」

「え?今?」

「みぃちゃんがお前訪ねてずっと待ってんで?」

その言葉を聞いて返事ができなかった。黙りこむ俺に廉が、おーいとイライラした声色で話してかけてくるけど、いやいや待ってよ。どういうこと?みぃちゃんがそっちにいる?俺の楽屋に?俺を訪ねて?てことは俺がみぃちゃんを思ってここに来てたときにみぃちゃんも俺のとこに来てくれてたってこと?そんなのそんなの、

「あ、もしもしー?ねぇしょうくーん?今どこ?」

頭の中を色んな思考回路が駆け巡ってた時、聞こえてきたのは綺麗なソプラノの天使のような声だった。その瞬間、周りの雑音が一気に消えた。何も聞こえなくなって俺の耳元で俺の名前を呼ぶその声しかもう耳が反応しない。あー、みぃちゃん、俺すごいさ、もう、、

「・・好き、もうすげぇ好き、、」

ここが先輩の楽屋とかしかもみぃちゃんのグループのメンバーがいる楽屋とかそんなこと考えもできないぐらい気がつけば口からそんな言葉が出てた。多分いま俺の顔真っ赤だと思う。思わず顔を腕で隠しながら村上くんと丸山くんに頭を下げて楽屋から出ようと扉を開けた時。

「わっ!あ、みーっけ」

今度は目の前に現れた彼女。にっこり笑ってるみぃちゃんをぎゅっと抱きしめたのも無意識。そんな俺に「わ」と驚いた彼女は「あはは!どーしたの?」と俺の背中を優しく撫でてそれから楽屋の中に入るように促してくれて。俺はまたみぃちゃんの楽屋に後戻り。

「びっくりした!紫耀くん来てくれてたんだね」

「みぃちゃんなんでわかったの?」

「え?なんか電話の向こうからしんちゃんの声が聞こえたから」

そう言ってクスクス笑う彼女は時間があるかと俺の手を引きソファーまで連れてってくれた。いや待ってそういえば村上くんと丸山くんがいたからと目をやってもなぜか楽屋にはいつのまにか2人の姿はなかった。あれ、どこいったと左右を見ていたら目の前にコップが置かれる。かおる甘い匂いはきっとみぃちゃんがよく飲むお気に入りの紅茶の匂い。この匂いでそんな紅茶の種類までわかるようになるほど俺はこの人と過ごす時間が増えてきたんだと思う。

「紫耀くんの楽屋に行ったらどっかに出かけたって言うんだもん!びっくりしちゃった」

「いや俺もみぃちゃん出たって言われて待たせてもらおうと思ったから」

「ええ!同じことしてるじゃん!すごいね!」

楽しそうに笑うみぃちゃんはめちゃくちゃ可愛くて自然と頬が緩む。あー、可愛い、やばい。やっぱこの人世界で1番可愛い。今日いろんなアーティストとかアイドル見たけど全然違う。全く違う。群抜いて可愛いなんて思っていた時、「はい」と渡された赤い箱。緑のリボンでしっかりと結ばれたそれにコップに伸ばそうとした手が止まった。

「え、」

「メリークリスマス!紫耀くんっ!みぃサンタからプレゼントだよ〜!!」

「、っ、」

ああ、本当に神様はなんて意地悪なんだろう。みぃちゃんに出会って思うよ。神様はなんで俺とみぃちゃんを出会わせたんだろうって。

「今年は紫耀くんに本当にお世話になったからちょっとした気持ちだけど」

「、」

「これ渡しに行こうと思ったのにいないの!みぃサンタびっくりだよ!ねぇ、開けて?」

出会った瞬間からやばいなとは思った。テレビで見る以上にマジで可愛かったし普通にこの人美人だなだって思ってたけど生で会って実際見た時これはやばいって思った。けど映画で共演して真正面でちゃんと挨拶した時、マジで電流が走ったんだよ。あ、きっと俺本気でこの人のこと好きになるなって。やめろやめろって思った。その時みぃちゃんには素敵な人がいるのはみんなが知ってることだったし。俺の一方的な気持ちで彼女に迷惑だけはかけたくなかったから必死に抑えてたのに。

「、っ、」

箱の中に入ってたのは紺色のマフラー。俺でも知ってるブランドの高いやつだった。手に取るとすげぇ柔らかくて。みぃちゃんは言葉も出ない俺の手からそれを取ると優しく俺の首にマフラーを巻いてくれる。

「うんっ、やっぱりよく似合う」

「、みぃちゃん、」

「かっこいいよ、紫耀くん、きゃっ、」

彼女の腕を引っ張ってぎゅっと抱きしめる。その瞬間甘い匂いに包まれて頭がクラクラした。こんなのだめだよ、みぃちゃん。だってあの時と違って今の俺にストップないんだもん。止まる理由が今ないのにこんなことしたらさ、ダメだよ。止まるわけないじゃん。

「・・ずるい、これはさ、ずるすぎるよ」

「え?」

「みぃちゃん、好き、大好き」

「ふふっ、私も大好き」

「俺もこれ渡したかった」

こんな奇跡ある?って思う。俺が選んだプレゼント。箱を開けるとそこにはパステルカラーのピンクのマフラーが入ってた。その箱を見てみぃちゃんの動きが止まる。

「まさかプレゼントかぶりするとは思わないよ」

絶対似合うと思った。これを見た瞬間みぃちゃんしか浮かばなかった。可愛い彼女にぴったりのふんわり優しいピンク色。今から沢山使う寒がりな彼女がこの冬俺を思ってつけてくれるように。俺を考える時間が増えるように。彼女の首に俺も優しく巻けば、やっぱり、いや想像以上に可愛い姿になんだかわかんないけど視界が歪んだ。

「うん、やっぱ、可愛いっ、」

「、紫耀くん、?」

「ごめんっ、なんか、感動して、ははっ、やっぱり可愛い、世界で一番これが似合うのみぃちゃんだ」

ダサいぐらい涙が溢れてきて。そんな俺にびっくりしてる彼女に謝れば俺の頬にそっと綺麗な白くて長い指がのる。

「、ありがとう、すごく嬉しい」

「んーん、俺も嬉しい」

「紫耀くんは私のことこんなに可愛い色が似合う女の子って思ってくれてるんだね」

「俺の中で1番可愛い女の子だから」

「、ありがとう、本当に、こんなに嬉しいプレゼントはないよ」

そう言って笑うみぃちゃんが本当に嬉しそうにマフラーに触れて笑ってくれるから、あぁきっとこの世界で今1番幸せなのは俺だと思った。

「今度さ、このマフラーつけて遊びに行こ?」

「あ、いいね!2人で冬デートしようか」

「美味しい店調べとくよ俺」

「え!楽しみ!私も調べとくからプレゼンしよ?」

「冬らしいことしたい」

「いいねー!考えようか」

彼女と笑い合っていればドアが開いて入ってきたのはエイトのメンバーさんたちで。俺に気づくと手を上げてくれるみなさんに頭を下げてそろそろ行かないと、と思い立ち上がる。

「みぃちゃんありがとう!大事にする」

「うん!私も!」

「あ、最後に写真撮っていい?」

「撮ろう撮ろう〜!」

2人で撮った写真には恥ずかしくなるほど幸せそうな顔して笑う俺がうつってた。スキップするぐらいの気持ちで帰る楽屋への帰り道。こんなにも幸せなクリスマスはないと思った。あぁ、もうだめだ、好きすぎる。もう会いたい。別れてすぐに会いたくなる。好きで仕方ない。

「・・はぁ、やばい、マジで好き」

サンタさん。俺すげぇ良い子にするから。仕事もめちゃくちゃ頑張るから。だから俺にあの子をください。あの子をプレゼントしてください。そんなことを思いながら楽屋に帰ってきた俺に廉が「キモい、顔緩みすぎ」とドン引きしていってたけど今の俺にはそんなこときにならなかった。


冬のプレゼントはただ一つだけ、


(あれはやばいなー)

(・・ガチやったな)

(まぁな、そら、そうなるわな)

(・・そういう子が増えてくわな)


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