ぷらいべーと

□彼女の可愛い小さな嫉妬
1ページ/1ページ


「ただいまー」

「おかえりなさーい」

いやマジでどうしよ。いまだにおかえりなさい、にときめくわ。そう思って聞こえてきた声に感動していればパタパタと走ってくる音が聞こえてきて、見えたのはこっちに向かってくる彼女の姿。ああ、もうお風呂入ったのかな。部屋着になってる。俺のパーカー着てもらってるけどマジで可愛い。細いからパーカーがだぼだぼで可愛い。ニヤニヤが止まらない。さっきまで仕事で疲れていたはずなのにそんな気持ちはどこかに一瞬で吹き飛んでしまうから不思議だ。

「おかえり〜!!!」

ガバッとそのまま飛びつかれたから彼女を思いっきり受け止める。ぎゅっと抱きしめてそのまま首元に顔を埋めればみぃちゃんの甘い匂いがして幸せな気持ちになった。

「ねぇ、お風呂もう入ったの?」

「うん、今日は早くに入ったの!」

「えー、一緒に入りたかったのに」

「ふふ、だめぇー♡」

「はは、可愛いなぁ」

「紫耀くんも入ってきなよ」

「うん、あ、みぃちゃんのご飯残りないの?」

「え、あるけど紫耀くん中華食べたんでしょ?」

「いやでもみぃちゃんのご飯食べたかったんだもん」

「あんなにガッツリ食べてたじゃん!また作るから今日はやめといたほうがいいよ?」

今日はメンバーやスタッフとの会議が遅くなるから出前を頼むことにした。皆で中華を頼んで食べたから写真撮って、仕事終わりに俺の家に来ると言ってた彼女に送れば送られてきたのは美味しそうなご飯。どうやら俺の家でご飯作って食べてたらしい。そのご飯がマジで美味そうで、早く帰りてぇー!!!って項垂れてたらじんに変な目で見られたもんな。

「あれなにー?すげぇ美味そうだった」

「野菜を豚肉で巻いたの。豚肉巻き!」

「絶対美味いじゃん。ご飯だけ食べに帰ってこればよかった!」

「あはは!びっくりするよそれは笑笑」

ケタケタ笑うみぃちゃんを後ろから包み込みながら歩いてリビングに向かえばテレビに映る大きな自分と目があって。あ、と思ってテーブルを見れば見慣れたものが置いてあった。

「届いたんだ!」

「うん、ちょっと前から見だしたとこ」

「なんか俺と目合ってるのすげぇ不思議なんだけど」

「あはは、この紫耀くんかっこいいね」

「ほんと?」

「うん、これ見るから早くにお風呂入ったの」

え、なにそれ可愛い。キュンっとしたから彼女の頬に唇を寄せようとすればサラリとみぃちゃんは離れていっちゃってソファーに行ってしまった。

「紫耀くんのお着替えお風呂場に置いてるからね!」

「え、ありがとう」

「じゃあ私これ見るから」

「(笑)わかった(笑)」

そういってリモコンを握れば部屋に流れる俺らの曲。みぃちゃんは体を揺らしながら楽しそうにそれを見ていて、うわ。可愛い。歌ってるし。可愛過ぎてこっそり後ろからみぃちゃんを激写。やべぇこれ可愛い。でもなんだろ。きっと今すげぇニコニコしてる思うから画面越しの俺に妬けるんだけど。そんな可愛い顔見せてもらってさ。そんなこと言ったら彼女に怒られそうだから、俺も早く上がってみぃちゃんの隣に行こうとダッシュでお風呂に向かった。

「上がったよ〜」

マジで秒で入ってきて上がってみぃちゃんの元へと向かったら、ソファーで膝を抱えて座っていた彼女がこっちに目をやって「おかえり、早かったね」と笑う。ん?でも待って。なんか違和感。あれ?と思って彼女の隣に腰掛ければそのまま画面に食いついているみぃちゃんに「髪の毛乾かしておいでね」と目も合わせずに言われる。ん?やっぱなんかおかしくない?そう思ってみぃちゃんを見るけど、その可愛い瞳は画面を見たまま俺には向けてくれない。てかさっきまで身体揺らして楽しそうだったのに。なんか、雰囲気、違うくない?そう思ってそーっとみぃちゃんの方に寄って彼女の肩を抱こうとすればさらりと避けられて立ち上がった。

「紅茶淹れてくる」

ピッと停止ボタンを押してみぃちゃんはキッチンへと行ってしまうから虚しく俺の伸ばした手だけが残る。え、なにこれ。

「・・みぃちゃん?」

「んー?」

「・・・いや」

「・・・」

静かに紅茶を入れている音だけが部屋に響いて。あー、なんか、わかったこの感じ。だからキッチンへ向かえばみぃちゃんは俺が来てることに気づいてるはずなのにこっちを見ない。そのままコップを持って俺の隣を通り過ぎようとしたからスッとその道を無くした。

「・・通して?」

「ちょっとお話ししてからね」

「・・いらない、お話なんて」

「いるよ。はい、コップ貸して」

彼女からコップを取って手を握りそのままソファーまで連れて行ってそこに座らせた。みぃちゃんはそんな俺に黙ってされるがままで。ソファー座っても目が上手くあわない彼女に向かい合うようにあぐらをかいてソファーに腰掛ける。

「・・みぃちゃん、なんか、怒ってる?」

「、っ、」

多分っていうか絶対。なんとなく彼女から感じる雰囲気は怒りだった。ピリッとしてるというか、怒ってること隠そうとしてる感じ?わからない。みぃちゃんにそんな今まで怒られたこととかないし。それに彼女が怒ってるのってそんな見たことなくて、ましてやそれが俺に向けられたことなんて一度もない。だからこれが俺に向けられて、なのか。何に向けられてなのかもわからないけど。彼女は確実に俺がお風呂に入る前と後じゃ雰囲気が違うことだけはわかる。

「・・俺、なんか、した?」

「・・・」

「したならごめん。情けないんだけど理由わかってないから教えて欲しい」

「、」

「ちゃんと謝りたいから、教えてくれないかな?」

彼女をもしかしたら悲しませてるのかもしれない。何か俺のことで嫌な気持ちにさせたのなら、そんな気持ちすぐに消したいからちゃんと謝りたい。次から二度としないから教えて欲しいんだよ、そう思ってみぃちゃんの肩に手を伸ばした時、みぃちゃんがやっとこっちを見る。その瞳はかなり潤んでいて。え、まじ??泣きそうになってる彼女に頭は真っ白になる。

「え、ちょ、うそ、待って。マジで、ごめん、え、」

「、っ、違うの、」

「・・ん?」

「、しょうもない、ことだから、言いたく、ないの」

そう言ってきっと泣かないようにしてるのか涙を拭って上を見るみぃちゃん。そんな彼女にどうしたものかと思って彼女の肩をそっと持って抱き寄せれば今度は拒まれることはなく、俺の胸の中にそっと包み込んだ。

「教えてよ、みぃちゃん」

「っ、」

「みぃちゃんに泣かれるの辛いもん」

「、」

「俺みぃちゃんにはいつも笑ってて欲しいから。だからそのためなら俺ができること何でもしたい」

「、っ、」

「その涙の原因教えてよ、」

みぃちゃんをそっと離して目を合わせれば大きな瞳は赤くなっていて。親指で滴を拭えばみぃちゃんは唇をムッと噛み締めた。

「・・みぃちゃん?」

「・・・あれ」

彼女が指さしたのはテレビ。そこにはまたタイミング良く俺が映っていて。・・・ん?あれ?

「・・・ん?」

「、笑わないっ?」

「え?」

「ほんとに、しょうもないから、聞いても、笑わない?」

「え、笑うわけないじゃん。みぃちゃんが泣いてるのに」

「・・・」

俺の言葉に少し考えているのか眉をグッと寄せた彼女は、俺と目が合い数秒感。根負けしたのは向こうみたいで、みぃちゃんはテレビを指差す。

「・・、紫耀くんが、ティアラの皆にすごーく優しい顔してるから」

「・・・」

「ファンサもすごーくしてるし」

「、」

「・・うん、なんか、それに、モヤッとした、だけ、」

「、え、」

「私の彼氏はみんなのアイドルだなって実感して、なんか、モヤモヤしただけなの、」

「・・」

「っ、おしまい、もう、私、帰る」

「待って待って待って」

耳を赤くして立ちあがろうとしたみぃちゃんの腕を掴みまた座らせて、予測外の理由に頭が真っ白になって働かない。やばいどうしよう。キャパオーバー。え、待って待って。みぃちゃんが、ライブの俺見て?ファンサしてるから、モヤっとした??え、待って待って、それってライブの俺に、

「嫉妬したってこと???」

「、っ、だから、恥ずかしいから、言いたくなかった、」

「、・・嘘でしょ、」

みぃちゃんが?俺に?画面の俺に嫉妬?なにそれなにそれ。みぃちゃんってそんな気持ちになるわけ?え、待ってよ。なにこの可愛い存在。むりむりむり。

「、っ、笑わないって、言ったじゃん!!!!」

多分俺のニヤけ具合がマックスになったからみぃちゃんはそんな俺に気づいて怒ってマジで向こうにいっちゃいそうになったから、そんな彼女を捕まえてそのままソファーの俺の膝の上に向かい合うように跨らせた。

「みぃちゃん無理。可愛過ぎて死ぬ俺」

「っ、可愛くないのっ、離して」

「やだ。無理。えー、まって、にやけが止まんない」

「なんなの!?もう!!!腹立つ!紫耀くん!!」

「泣いても怒っても可愛いとかもうどうしたらいいん?」

「知らない!!!私怒ってるの!!!!」

「怒ってるの?」

俺の反応に怒ったのか離れようとバタバタするみぃちゃんをぐっと抑えてそのまま唇を重ねれば、みぃちゃんは抵抗するけど俺の力に適うわけもないからそのままソファーに押し倒した。

「、っ、ねぇ、だから、力はずるい」

「へへ、みぃちゃんが悪い」

「・・・ごめんね、嫌な態度、とって」

そっと俺の頬に当てられる手。嫌な態度ってなに?あ、あのさっきの避けたりしたやつ?あれでみぃちゃん謝ってくれるの。そんなこと思ったけど、まぁ、拒まれたのは傷ついたからなー、と眉を下げて少し意地悪して困った顔をすれば彼女は俺の頬をサワサワと撫でた。

「やだ、傷ついたもん」

「うん、だよね。ごめんなさい」

「嘘だよ、拒まれたのは確かに傷ついたけど、その嫉妬は可愛過ぎてウェルカム」

「・・・、めんどくさいよ」

「めんどくさくねぇし!みぃちゃんの愛だもん、普通に嬉しい」

そんなことで嫉妬してくれるとか思わなかったもん。嫉妬なら俺の方が絶対いつもしてるから。だってこないだだって俺がヤキモチ妬いてすげぇ迷惑かけたもん。

(えー?本当に見るの?1人で見てよぉ)

(なんで!一緒にみようよ)

(私自分の出たやつとか見るの苦手なの)

(はいはい、いいから)

みぃちゃんが撮影頑張ってるの知ってるからこの冬から始まったドラマを彼女と一緒に見た。嫌がるみぃちゃんを俺の膝の中に入れて再生を押したものの、

(・・・)

(・・・・・)

なかなかの俳優さんとの仲のいいシーンが多くて。そりゃ話は少し虚しくて悲しくて素敵だけど。キュンキュンシーンが多いというか。恋愛ドラマだなって感じだというか。とにかく俺の黒い感情が溢れて仕方なくて。途中で一回リモコンで止めてしまったぐらい。

(・・やばい、苦しい)

(え?)

(みぃちゃんが俺以外の男とくっついてるの見るのしんどい)

(・・え?)

彼女はそんな俺の反応に目を丸くしてびっくりしてたけど。けどすぐにニコニコと笑って俺に甘い言葉を沢山くれたっけ。そんなことだって最近あったことだし。だから俺の方が嫉妬ばっかりしてるんだよ。メンバーさんにもみぃちゃんの近くにいる俳優さんたちにも皆に黒い感情沢山持ってんだから。

「ねぇ、みぃちゃん。俺がこうやってさ、好きでたまらなくて触れるのも」

「んっ」

「頭がおかしかなりそうなぐらい好きでキスするのも」

「んっ、」

「全部全部みぃちゃんだけなんだよ」

「、うんっ、」

「だから不安にならなくていいの。みぃちゃんは堂々と俺に愛されてたらいいわけ」

「、うんっ、」

「でも、不安になるな、とは言わないからさ。なったらすぐに教えてよ、何度でもこうやって、俺の愛教えるからさ」

「、ふふ、うん、紫耀くん」

「ん?」

「だーいすきっ、」

「・・・俺も、すっげぇ好き」

そのまま覆い被さるように彼女に唇を重ねた。可愛い彼女の可愛い嫉妬。だめだ、嬉しくて仕方ない。どうかこれからもみぃちゃんが俺に大きな愛を向けてくれますように。彼女が不安になった時はすぐに気付いてその不安を1番に拭うのが俺でありますように。そんなことを願いながら俺の腕の中にすっぽりおさまる彼女にたくさんの魔法のキスを落としたのだった。


彼女の可愛い小さな嫉妬、


(君だけしか見えない〜)

(ほんとにそれ好きだね)

(今のれんれん王子だったね)

(・・は?なんで廉のこと見てんの)

(いや見てんのって映るから)

(ちょ、俺以外のメンバー見るの禁止)

(・・え、どうやって?)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ