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□雨のち、晴れ
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「ひっ…ひっく…」
「…泣くなよ」

月明かりの映える夜
珍しくハルからの呼び出しだと来てみれば
泣きじゃくるコイツがいる
俺は状況が読み込めねぇまま、とりあえずなだめる

「おい、泣くなっつーの」
「ひっく」
「そもそも何で泣いてんだよ」
「ひっ…ぐす」

ハルの眼から溢れる雫は
止まる事を知らないかのように
一つ一つ静かに零れてゆく
それを見つめつつ、ゆっくりと髪をなでる

泣いている原因がわからねぇ以上
俺にはどうする事も出来ねぇんだよ
なぁ…

「外、出よーぜ…今日は一段と月が美しい」

ハルをそっと抱き上げ外へ出る
外へ出ると夜風がサァッと二人とすれ違う
清々しいほど心地が良い
サニーは地面へ座り込みハルを膝に乗せる

「見ろよ、月が美しいぜ」

俺の言葉にゆっくりと顔をあげる
月明かりで色白の肌が一層透き通って見えた
その時、ハルの眼が揺らぐ
光の入るたびにゆらゆらと眼の色が変わり
眼から最後の雫が頬を伝う
その道が月の光でキラキラと輝いた

…美しい

「…綺麗」
「お、ようやく泣き止んだか」
「すみません」
「謝る事じゃねーし、落ち着たなら良」
「…ありがとうございます」
「本当、美しいな」

そうですね、とハルはまた月を見上げる
俺は眼にはもう月なんか映らない

「前の方が美しい」
「…不謹慎ですよ」
「ははっ」

俺が笑うとつられてふふっと笑いだす
泣き顔も美しかったが
やっぱ笑ったのが一番美しい
月なんか最早かすんで見えちまう

「さ、そろそろ体が冷えちまうぜ」
「…もう少しだけ」
「ったく、体に毒だぞ」
「…そしたら、サニーさんが温めてくれるでしょう?」

ハルはクスリと笑顔を見せる
ああもう、なんつー顔見せんだよ
こんな顔されたら何も言えねっつーか…
俺はハルを引き寄せ、少し強く抱きしめる

「…も少しだけだかんな」

その言葉にハルはまた笑顔をこぼし、空を見上げる
月明かりでまた眼の色が変わる

まるで虹のようだな

ふと、何で泣いてたのか聞こうと思ったが
月を見るハルを見つめていたら
どーでも良くなった
俺らは飽きるまで月を見続けていた


雨のち、晴れ
その後俺は美しい虹を見た







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