novel

□胸のぷちぷち、ぱっちん
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 六歳、夏。

 私は、焦っていた。

   ● ● ●

 歓声も怒声も一緒くたに掻き集めて、会場は次第に熱を帯びていく。私も汗ばむ拳をきつく握って、頬の紅潮を抑えるようにきゅっと口元を引きしめた。先輩。がんばれ。刹那、私が密かに目で追う影とボールが交錯したかと思うと、ボールは軽やかに弧を描いてゴールに収まった。どっ、と湧き立つ観衆と、それにはにかんで拳を突き上げる先輩がまぶしい、あぁ、そんな青春の一光景に私も入ることができたなら――。


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