記憶のオルゴール
□第0話
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月のない夜。
まるで、誰も存在していないような世界のなかでただ1つ足音が響く。
タン..タン..タン.....
楽しげなその足音から伸びる影。
まだ幼い顔だちのその影の見つめる
先にあるのはそびえ立つ巨大なビル。
『・・・ここで・・ついに・・・を・・。』
声が響いたそこに既に影はなかった。
静かな夜が引き裂かれる。
汚い笑い声だったそれはいつのまにか叫び声へと変わっていた。
「・な・ぁあ・うあぁぁぁあーーーー。」
「あ・・うあぁ・・助けて、くれぇ・・・。」
多いはずの叫び声が消えるまで
そう時間はかからなかった。
壊れた夜は明ける。
侵食する黒
拡がる模様
あがる息
こんな事になるなんて誰が予想できただろうか。
少なくとも俺には無理だった。
もう、元には戻れない。
あとは沈むだけ...
夜
数え切れないほどの魂が音もなく消えた。
死体1つ、血のあとさえ残さずに。
まるで何事もなかったかのように
世界は回る。
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