記憶のオルゴール

□第3話
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「・・・・。」

「そんな目で見つめたって無駄だからな。」

「・・・・。」

「はぁ。」




無言で睨むなっての。

なんかこのパターン、前にもあったような・・・。













レイの記憶を取り戻したあとの話になるのだが...







――――俺はお前のことを騙していたんだ



優しさなんてない



お前の見ていたものは全てまやかしだったともいえる



それでも、いいのか




お前は・・・

後悔しないか





――――・・・後悔なんか、できるはずがない


もう、孤独は散々だ






瞳は伏せられていた。
何かに耐えるかのように。


蒼は偽りの姿で、本当はゼロだということを告げると
ふわっと嬉しそうに笑った。

そんな笑顔を見て不思議で堪らなかった。





どうしてこんな俺を許せる。

俺はお前を騙していたんだぞ。

少しくらい罵声を浴びせたって良いんだ。

そうでなければ・・・




そう言うと、可笑しそうに目を細め呟いた。

「ゼロに少しでも近づけたのに、なぜそんなことを言わなければならない。
逆に嬉しいくらいだ。」



・・・。


不思議な奴だ。










「ところでゼロ。ちゃんと寝ているのか?」



ピシッッッ



・・・
今、なんと?



何も答えない俺に、レイの眉間にだんだんと皺がよっていく。



綺麗な顔がだいなしだぞー。
そういえば、蒼のときにそのこと話してたんだっけ。
あのときはレイのところもよく寝床にしてたからなぁ。



『ね、寝てるに決まってんだろ?』

「・・・・・。」

『・・・・。』

「・・・。」

『・・。』



こいつこうゆうときはなかなか折れないんだよなぁ。




『だーもう。分かったから睨むなっつの。
・・・まだ2日だよ。』

「まだ、じゃない。
なぁ・・・これからは俺のところに来てくれるんだろ?」



目の色が不安そうだ。

言っているのは夜のことだろう。





『・・・毎日は無理だ。』

「・・なぜ。」

『俺にも事情があるんだ。できるだけ来るから、そんな顔するな。』

涙をぶり返しそうに少し顔を歪めたレイの頭を優しく撫ぜる。

「今日は...」

『今日は無理だ。だが明日は行く。もう1人になんてしない。』



だから怖がるな。







頭を撫ぜていた手をとり、自分の頬へと持っていった。
愛しそうに、俺の掌に頬ずりを繰り返す。




心は一度、どこかにおいてきてしまったのだろう。
体はこんなにも大きいのに。

今はまだ甘えることを少しずつ覚えてきた頃。








そんな姿は




どうしようもなく







可愛くて



愛しくて









滑稽だった。







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