記憶のオルゴール

□第3話
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暗い今は時既に、夜中を過ぎ次の日へと移りだしていた。



やばいな。
これはもしかしたら怒っているかもしれない。



銀の髪をなびかせ街の中をぬって走る。
人目につかない裏路地に曲がると、ホッと息を吐き出した。




『またせたな。』




声が反響する。

闇から姿を現したのは数え切れないほどの飾りを身にまとった
青年だった。


暗く。

だた静かに佇む。


「そこまでではない。・・・そっちはどうだ?」

『変わらないさ。今も・・・昔も。』



あそこは何も変わっていなかった。

あの事件から何一つ。




ただ、一人の女を除いて...










「・・・そうか。預かっているのもだが、あれはどうすればいい。」

『あぁ、そのことなんだが・・・。』

そういって、徐に何かを取り出した。
手の中には金色のピアスが2つ。
涙のような形をしていたそれは、深い色合いで
本当に綺麗だ。


『お前に似合うよ、きっと。・・・龍鬼。』

「なんだ?それは。」

龍鬼と呼ばれた男は、異様な雰囲気を放つそれに眉を顰めた。

『これは...。』










「な、んだと?・・・それは確実なのか。」

只、今聞かされたばかりの事に目を見張る。


『さぁ。でも、保障はあったほうが良いだろ?』

「・・・了解した。」

『あぁ。頼むよ。』

苦笑が洩れた。
つい、出てしまったような笑い。
その言葉を言うことは決まっていたのかもしれない。


不確定な事実。














『・・・あれは、変わりない?』

突然の言葉。
ほんの小さな呟きだった。
だが目の前の男は顔を強張らせていた。


「変わりは・・・、ない。あの時の、ままだ。」

『そうか。それなら問題は、無いね。』


ゆっくりと、だが強さをもって俺を見つめる。





お前の言いたいことは分かってる。
お前の唯一の願望。
いや、誓願か。

あの時からずっとそのためだけに生きてきたんだろな。





男の瞳を見るとなんとも言えない色が浮かんでいる。



それは後悔。



そして遺憾。





『安心しろ。その役目が終わる頃には、お前の願いも変わっているだろう。』




何かが変わる。


それは別に悪いことばかりではないのかもしれない。






お前にとっては、どうなんだろうな。

あれが・・。
あいつが目覚める頃、俺は...






ゼロは龍鬼を見ていた。
目線の先ではそれが金色に輝いている。


「・・・俺はお前を恨んではいない。」

『知ってるよ。でもね
誰もがハッピーエンドなんて存在しないんだ。』


「・・・。」



――――あぁ。まただ。



目の前の顔を見て、目を見開いて固まった。





ゼロが・・・笑っている。
まるで全てを赦すかのような暖かい微笑み。

暖かい、筈なのに・・。


感じるのは真逆の感情。







この顔を見るようになったのは、あの時からだ。
お前は・・、何も悪くないのに。


そうだろ。



ゼロ。









『次があるから、俺はそろそろ行く。・・・龍鬼。』

信じてる。


そんな馬鹿みたいな言葉をのこして消えた。




お前は俺を裏切らない。

いや。裏切れない。
絶対的なつながりがあるからこそ言い切れる。
まぁ、そのつながりが切れるのも遠い未来ではないが。






あいつらは、どうなんだろうか。
今から会う奴らの顔を思い浮かべ、苦笑した。


俺はあいつらに如何思って欲しいんだろうな。




俺になら

”殺されても...”

と言う奴ら。


嬉しそうに笑う奴らを俺には理解できない。





でも勝手に慕うあいつらを、殺したくない
と思う程度には気に入っているんだろう。

これが大切だと言う感情かは

分からないけど。







俺も大概


幼いのかもしれないな。






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