ノーマル・カプなし

□君が大人になったから
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金なし、彼氏なし、美貌なし。好きなモノはお酒とネット、嫌いなモノはウザい人間。性格はひねくれていて何事にも無感動。んでもって今は一人暮らしの寂しい三十路なあたし、桜木 美帆の元に、ソイツはいきなりやってきた。

「俺のこと、覚えてますか?」

開口一番、緊張した様子で言い放ったのは現在うちの会社では最も有望株な白瀬 鷹。
人気の少ない休憩室近くの自販機の前で、おしるこを飲んでいる人間に言うことでは断じてない。もしや今流行りのKYというやつなのか白瀬。

「あー、白瀬さん?どなたかと間違えてません?」

当たり障りない台詞を探して口に出した途端、白瀬はそのキリリとした男前な顔についた切れ長の目からボロボロと涙を零した。
ちょっとちょっと、いい年した男がそんな簡単に泣くのかい、そう内心引きながら考えていると、白瀬がグズグズな声で宣言する。
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