ノーマル・カプなし

□龍の箱庭
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病弱な僕だけど、裏山を登るのは苦ではない。裏山は彼女の領域なので、僕は普段より数倍体の調子がよくなるからだ。
山の中腹にあるそこそこ大きな社の境内に入って、鈴を鳴らす。
一礼二拍手二礼、この国古来の礼儀に乗っ取って来訪を告げると、悠然と彼女が降りてきた。
「ただいま、流(ながれ)」
「うむ、息災のようでなによりじゃ、太一」
龍の姿はいつ見ても荘厳で、彼女が僕に飼われていることが嘘のように思える。
「今日は何があった?早よう聞かせてたもれ」
「わかってるよ、すぐに話すから早く本堂に行こう」
僕ん家が代々祀る龍神は、とても好奇心が旺盛だ。彼女に様々な話を聞かせてから家に帰り、宿題をしてご飯を食べるーーーそれが僕の日常。
変わらない、日常。
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