歪愛

□序章
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俺が小学校の中学年になった頃、父が末期ガンで亡くなった。
まだガキだった俺は、父のベッドにすがりついてただ泣きじゃくっていたのを覚えている。

それはあまりにも急な出来事だった。父が病気なのは知っていたが、まさか末期ガンだなんて。
母と祖母だけが事実を知っていて、俺と妹に隠していたようだった。
俺が父の病名を知ったのは、父が他界してからだったのだから。

父が亡くなって、母と祖母は不仲になった。
祖母は父方の母であるから、父が亡くなってしまえば母と祖母は他人。
二人は子供の俺にも解るくらい険悪になっていった。

俺が中学生になったある日、祖母は家を出た。
それからというもの、俺らはずっと貧乏暮らし。

俺は荒れていた。
不仲になる母と祖母。
親戚からは冷たい目で見られ、肩身も狭い。
貧乏な生活。
喧嘩や非行に明け暮れる毎日だった。

この頃だ、俺が男として目覚めたのは。
そう、俺の体は女。
いわゆる性同一性障害。
しかし医者も親も、一時的な精神問題が引き起こしているのだろうと誰も俺を認めなかった。
俺は余計荒れた。

高校に入る頃には落ち着いたが、相変わらず馬鹿な学生だった。
授業はほとんど出ず、セックスに溺れる日々。
真面目に恋愛なんてする気も無かった。

セックスの相手は男。
この頃は胸なんか取り去ってしまった後だ。
外見は男で体は女。
俺の体質は珍しいんだろう、半ば強姦のように行為に及んでいた。

たまに女ともした。
俺は男として女が好き。けれど俺の下半身は女。だからセックスではなく単なる愛撫であったが俺は満足だった。

そのまま適当に短大に入った。自分でも合格したことに驚いた。
でも高校の時のまま、人生は変わらないと、まだ俺はそう思っていた。


 

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