短編
□口紅
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「俺さあ、口紅の味って嫌いなんだよね。」
それとなく聞いてみた、光良がキスを避ける理由。それは、意外なほどに単純なものだった。
だけど、単純なくせに光良の中に根強く残って消えない想いだった。
「俺、女の子みたいじゃん?
だからさ、襲われたことあるの。おばさんに。」
日曜日の午後下がり、空は快晴で気温は快適。
そんな環境にあまりにそぐわない、突然の告白。
『何で、キスされるのそんなに嫌がるんだよ。』
なんの考えもなしにそう尋ねた数十秒前の自分を呪いたくなった。