短編
□これからもありがとう
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「ほら、行くぞ。」
「はあい。」
同じ企業に勤めているわけではない。
会社の入社時間だって同じではない。
それでも早いほうにあわせて同じ時刻に家を出るのは、まだ学生時代の癖が抜けていないからか。
それなりに好きだったんだ、一緒に歩くのが。
それは俺たちが成長しても、俺たちの肩書きが変わっていっても変わらない。
だから俺はわざわざ早い時間に出勤して、その気もないのに真面目だと上司に評価されることになる。
あいつはあいつで中学生のときに使っていた笑顔は健在なようで、会社でも結構な信頼を築き上げているらしい。
まあそんなこんなで生活には困らないし、いや貧乏でも狩屋と暮らせるなら俺はそっちを選ぶだろう。
それは、あいつも同じなはず。