短編
□雪
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シュウ白
ひらり、と舞い落ちてくる白いそれを、黒髪の少年が握り締めた。
実際にはその粒は、少年が触れた瞬間に水になってしまったが。
「これが、雪・・・か?」
「そうだよ。これが雪だ。」
「都会では滅多に降らないから、あまり見たことはなかったな。」
「・・・この島では、昔から夏は涼しくて冬は寒いからよく雪は降るよ。それこそ、ずっとずっと昔から・・・」
シュウと呼ばれた少年は寂しそうに微笑み、何か言いたげな目をする白竜を見返した。
「前から聞こうと思っていたんだが・・・お前は、」
「・・・今は、こうして雪を見ていよう・・・?ほら・・・綺麗だよ・・・」
その声は、消えてしまいそうにか細く。
雪に解けて白く消えた。
二人の手がそっと触れ合って、そこに熱が生まれ、雪がはらりと溶ける。
どちらからともなく目を合わせ、お互いを射抜くような視線はぶつかって交わった。
「・・・大丈夫。僕は、いつでも見てるから。ずっと傍に居るから。」
白竜の手に残された熱は、雪と消えた。