短編
□さよならのかわりに花束を
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あなたがくれた花束を、あなたが俺にくれた思い出を、失くさないようにしっかり抱いて、今、此処から歩き出します。
いつか、どこかで巡り会えたなら、そのときは・・・笑っていられるように。
二人で、育てようって言って、種を選んだときのことを覚えてますか。
柄にもなくワクワクしては、俺に指摘されて真っ赤になってたあなたを、俺は今でも覚えてます。
咲いた花は、パッケージ通りの綺麗な花で、でもあなたがいなかったら、そんなもの綺麗でもなんでもない。
一人で見てたって、なにも感じることが出来ない。俺にとってのじょうろはあなただったのかもしれない。
あなたが置いていったプランターは、色とりどりの花が咲いてるのに寂しくて枯れそうだった。
それでも・・・それでも、俺も此処から旅立つことを決めた。
そうして、止まりっぱなしの俺の時計が動き出す。
あなたがくれた花束を抱いて、いま、此処から歩き出します。
「男が男に花なんて」そう言って笑ったとき、俺はもうその先を想像してた。
だからこそ、泣かないようにああ言ったんだ。
だって、やっぱりあなたの決めたことを揺らがせるようなことはしたくなかったから。
だけど、俺ももう此処から進むから。
枯れた悲しみを、此処に置いて。