短編
□Probably, I believe you.
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人なんて信じられなかったし、信じたくなんてなかった。
ヒロトさんや瞳子さんみたいに、親代わりになっておれのことを可愛がってくれてた人たちさえ俺の心の中に踏み入って欲しくなかったんだ。
だから、こんな女みたいな先輩にほだされるなんて思ってなかった。
「狩屋、来週の鍵当番は俺たちだけど、いつなら都合がいい?」
「帰って確認しないとわかりません。」
「じゃあ二日選んでおけ。俺はいつでもいいから。」
散々嫌がらせした俺のことを、何もなかったかのように扱ってくれて。
それだけでも何だか変な気分になるのに、そんな風にいい先輩みたいなことされても困る。
見た目は女だけど声はカッコいいし、言ってることは男らしいし。
サッカーはうまいし、真っ直ぐだし、優しいし。
正直、捻くれた俺には眩しすぎて。
だけどその光は、厳しく刺さるものじゃなくて。
「先輩、俺火曜日と水曜日と金曜日なら大丈夫です。」
「お前二日でいいぞ、俺が三日やるから。
じゃあ、火曜と金曜よろしくな。」
純粋に、憧れてたとかいうのとはまた違った感情が、確かに此処にあった。