短編
□その愛に受けて立つ
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最近、少し困っている。
ついこの間転校してきてサッカー部に入部した南沢篤志が、むやみやたらと構ってくるから。
俺の何が気に入らないのか、それは俺だって完璧な人間ではないし何かしてしまったという可能性も多分にあるだろう。
しかしそれならそうとはっきり言えば良いのだ。
わざわざ嫌がらせをすることもあるまい。
「よ、月島。今日も頑張ろうぜ。
あ、髪はねてるぞ直してやるから動くな。」
正直、奴の使うワックスとやらは好きではないのだが。
大体そんなものが鞄の中に常に入っているというのもどうなのか。文句は言いはしないが。
「っ!」
「ああ、首弱いんだったっけな。悪い悪い。」
悪いだなんて全く思っていないような口調。
本当に、全く、手に負えない男だ。
上下関係を重視していない月山国光とはいえ、やはり一年生の俺が三年生の南沢にこうも頻繁に接触されると心地が悪い。
それを見越した上での嫌がらせなら、こいつは心理戦の得意な嫌がらせ好きだということになる。