短編2
□聖なる夜に
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倉南
「・・・南沢さん、雪降ってきちゃったんですけど。」
「・・・」
「南沢さん?」
今日はクリスマス。
一緒に過ごす相手もいない俺は、ふと思い立って月山国光中学校の寮に来ていた。
南沢さんの部屋にはサッカー部の後輩たちがいたけど、気を利かせて移動してくれたみたいで嬉しさ半分、恥ずかしさ半分な気持ちだった。
俺は秘かに南沢さんが好きだった。
けれど、別に今日告白するつもりだったわけでもなく。
これから先もずっと、そんなつもりはなかった。
けど。
「・・・倉間、好き。」
「え?」
「勝手にいなくなってごめんな・・・けど俺は、ずっと倉間が好きだったんだ。」
「・・・俺、男ですよ?」
体裁を気にする南沢さんのことだ。
これが本気なんてありえない。
そう、思っていたのに。
そう思うことで、抑えられなくなりそうな気持ちをどうにかしたかったのに。
「・・・ね、倉間。俺のこと抱いて?」
「・・・はぁ!?」
まあそんなこんながあって、今に至る。
「もう帰らなくちゃ、終電なくなっちゃいますよ・・・」
「じゃあ、帰らなくていいだろ。」
「ここ寮でしょうが。」
「別にいいって・・・倉間、俺のこと嫌いなの?」
既にスイッチが入ったのか、潤んだ目で見つめられたら我慢なんて出来るわけもなくて。
「っ、どうなっても知りませんよ!」
「観念するまで搾り取ってやるよ。」
そんな売り言葉に買い言葉で、クリスマスの夜は更けていった。
次の朝外を見ると、雪が積もっていた。
隣には綺麗な恋人の、無防備な寝顔があって。
今日はきっと、一生で一番幸せなクリスマス。