短編2
□一年の終わり
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「・・・光良、寒くないか。」
「大丈夫だよ、隼総こそ唇紫だけど大丈夫〜?」
「これはメイクだ馬鹿!」
きょうは一年で最後の日。俺は光良と、初日の出を見るために光良の家に泊まっている。
普段からよく世話になってるけど、年越しくらいは家族水入らずで過ごせばいいのに。
そんな俺の提案もばっさり切って、光良は俺を家に招待した。
「隼総くん、もうすぐお蕎麦できるからね。」
「あ、ありがとうございます。」
光良のお袋はすごくよくしてくれるし、父親は滅多に帰ってこないにしてもいい家庭だな、と思った。
少し空しくなった。
俺の家は両親が殆ど帰ってこない。
仕事だか何だか知らないが、それは俺が中学生になったら急に顕著になった。
そんな俺を気遣って、光良母子はよく俺を家に誘ってくれた。
フィフスのことで大変なときも、頑張れといってくれた。
俺にとっての母親は、光良さんみたいなものだ。
「・・・ねえ、隼総。
来年もきっと、楽しいことなんてあんまりないかもしれないけどさ。
隼総が変わらず家に来てくれたり、一緒にサッカー出来るならいいや。」
これはきっと、光良の気持ちか。
なら俺は、せめてそれに応えよう。
「・・・来年もよろしくな。」
「・・・おう!」
そんな、一年の終わり。
fin.