短編2
□桜前線はすぐそこに
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「もうすぐ桜が咲くね!」
「・・・ああ、そうだな。」
冬の寒さは姿を潜め、そろそろ暖かな風と花粉がそよぎ始めていた。
天気予報は毎日、嬉々として桜前線の予報をする。
そして、天馬も毎日嬉々として、桜の咲き時を予想していた。
「来週には咲くかな?」
「かもな。」
三年の先輩方はついこの間卒業して、今度は俺たちが先輩になる番だ。
それでも、こいつは一切の不安も躊躇も抱えてはいない。
少し羨ましいと同時に、俺が不安だった。
こいつだけ、何の悩みも不安も持たないまま、足踏みなんてしている俺をおいて、先に行ってしまう気がして。