短編
□チョコレートとか
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「初めまして、霧野くん。基山ヒロトです。
いつもマサキから聞いてるよ。冷静でカッコいい、自慢の先輩らしいね。」
うわあちょっとヒロトさんあんた何暴露してくれちゃってんですか。とっさにヒロトさんの口を塞ごうとしてもその言葉はばっちり先輩の耳に届いてしまったわけで。
「・・・悪いですか。」
「いや悪いなんて誰も言ってないしな。そっか俺自慢の先輩だったのか。」
こういうときさえも憎らしいほどに涼しげなままの顔が、やっぱり好きなんだよな俺は。
「もういいんで早く始めたいです。」
「わかったよ、じゃあ始めようか。霧野くんも作るかい、チョコレート。」
「いいんですか?・・・なら、お言葉に甘えます。」
誰にあげるの、それ。俺は自惚れてもいい?そんな事聞ける訳なくて。
まな板の上で刻まれた挙げ句、ボウルの中で溶かされてく可哀想なチョコをただ見つめるだけだった。
もしかして霧野先輩って家でもこんなことやってるのかななんて。
まだ知らない先輩の姿はきっといくらでもあるんだろうけど、今日は意外でもなく料理上手な先輩を知った。