壬生狼と過ごした2217日
□バラガキの夢
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「さぁ!夕飯だ!!酒持ってこい!!」
皆が広間に集まった中で芹沢さんの声が響き渡る。
と、同時に賑やかな宴会が始まった。
しかし夕飯と言っても外はまだ明るい。この感じだとだいたい4時くらいだろうか。
「ゆ、夕飯の時間って早いですね」
「そうですか?この時代の者は日の入りとともに休み、日の出とともに起きますからね」
隣り合わせた山南さんが穏やかな優しい笑顔を見せた。
う…////どいつもこいつもイケメンばっかりじゃねぇか////!!
「たいしたものではありませんがたくさん食べてくださいね」
山南さんのこれでもかっていうイケメンスマイルに、思わず顔を赤らめながら慌てて箸をとった。
私の前に置かれた膳の上には根菜の煮物と白米。それに沢庵が2切れ。
お世辞にも豪華な食事とは言えない。
そっと口に運ぶが、普段和食なんか食べない私にとって箸が進むものではなかった。
「お口に合いませんか?」
山南さんと反対側の隣りに座った総司くんが覗き込む。
「あ…いや…あんまりお腹すいてなくって……」
さすがの私も気を使う。
居候の分際でマズくて食べらんないなんて言えるか。
「由香!腹が減ってないなら酒を呑むがいい!!誰か!由香に酒を用意してやれ!!」
地獄耳なんだろうな。
上座にいた芹沢さんが声を張り上げた。
「ほら!呑むか、由香ちゃん!!」
「あ…永倉、さん……」
だったと思う。めっちゃがたいがいいなぁと驚いた人だ。
「永倉さんなんて固ぇなぁ!!新八でいいからな!!」
「いた!!」
新八さんは筋肉ムキムキなのであろうその腕で私の背中をバシバシと叩くと、私に盃を持たせ、なみなみと酒を注いだ。
「ほら!一気!!」
なにコレ。なに、このコンパノリは。
だけど嫌いじゃないこの雰囲気。むしろ好きだ。そして酒も好きだ。
現代で酒豪と呼ばれてた私。
いいのね?いいのね?呑んじゃうよ?
私はクイッと盃を傾け、注がれた酒を一気に飲みほした。
「おぉ〜!!」
「いい呑みっぷりだな!!」
広間の中は、すべての酒が私の喉元を通過したと同時にワッとわいた。
酒は強い方だと自負している。コンパや飲み会では私以外の皆が酔っ払ってることなんてしょっちゅうあった。
「なんでぃ。いける口か!ほら、どんどん呑みな」
いつもはもっぱらビールかサワーで、日本酒を呑んだのは今日が初めてだったけどなかなかいけるじゃん。
その後も新八さんやら平助くんらが何度もお酌してくれた。
そのたびに私は杯の酒を呑みほし、ある程度いい気分になってくると皆にお酌してまわり、徐々に打ち解けていったのだった。
いつの時代も酒は心を開かせてくれるもんだな。なんて、思いながら私は手に持っていた盃を何度も空けていったのだった。
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