壬生狼と過ごした2217日

□バラガキの夢
1ページ/3ページ




「この部屋を使ってください」


総司くんに連れられてきたのはこじんまりとした和室。四畳半、と言ったところだろうか。嗅ぎなれない古びた畳のにおいに思わず足が止まった。
…今日からここで暮らすのかぁ、私。

電気もない、きっとガスも水道も。
あぁ…マックもない。高級レストランも大好きなあのケーキ屋さんも。
…うん。少し、少しだけ泣きたくなってきたぞ。

なんで私がタイムスリッパーに選ばれたのかがわからない。
歴女とかだったら泣いて喜んだろうに。
てかタイムスリッパーってなんだ?私ってば新語を作っちゃった。やるじゃん私。

なんてことを考えていたのが顔に出ていたのか、総司くんが不思議そうに私の顔を覗く。

あ…だからそんな上目遣いは反則だってば。そんな可愛い瞳で見上げられたらお姉さん、ドキドキしちゃうよ。


「…どうしました?大丈夫?」

「ん…あぁ…大丈夫。ごめんね?なんだか事態がよく飲み込めなくて……」

「…そうですよね…突然未来から飛ばされたんだったら仕方ないですよね……」


自分のことのようにしょんぼりする総司くん。
ナニコレ。どこぞの乙ゲーかい?これは。


「あ…でもほら、私には皆がいるからさ?大丈夫だよ、うん」

「でも…」

「大丈夫だって!元気出して?」


…えっと。
過去に飛ばされたのは私…だよね。
なにゆえ総司くんが捨てられた子犬のような顔をしているのだ?
そしてなにゆえ私が彼を慰めている?


「おい、何総司のこと虐めてんだ?」

「あ……えっと……歳さん……」


いつのまにか歳さんが部屋の入口に立っていた。


「あぁ?歳さん!?」

「だって歳三でしょ?あ、歳たんとかの方がよかったですか?」

「てめぇ…やっぱり斬られてぇか?」


冗談のつもりだったが、歳さんの眉間にはみるみる深いシワが刻まれていったので、私は慌てて謝っておいた。

その隣で総司くんは「歳たん…」とクスクス笑っていたけど。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ