壬生狼と過ごした2217日
□あいつはあいつはかわいい年下の男の子
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桜の花も舞い散り始めた文久3年4月。
「さぁ〜、そろそろ庭掃除でもするかぁ…」
まだ冷たい風が屯所内を吹き抜ける中、私は縁側でう〜ん…と伸びをし、ピョンと庭に飛び降りた。
「…由香ちゃん。中々女中の仕事も板についてきたじゃねぇか」
パチリ
「ちっ…!そうだな…少し前まで何もできなかったのが……これでどうだ!」
パチリ
「ぐわっ!!そうきたか!!」
「今じゃ嘘みてぇになんでもできるようになったもんな!」
屯所でよく見られる日中の風景。
今日将棋をさしているのは新八さんと左之さんだ。
私がこの時代に来てから早二週間が立とうとしていた。
相変わらず帰る手立ては見つからないが、私自身の適応能力がMAXで働いたらしく、少しずつではあるがこの時代に慣れてきた。
「おう!由香!!庭掃除とは精がでるな!結構結構!!」
…まぁ、若干慣れない『人』もいるんだけどね。
「芹沢さんは?また島原ですか」
「阿呆!いつもいつもわしが島原に行ってると思うなよ!!」
いや、行ってるじゃん。
昨日も一昨日も行ってたの、私は知ってるんだぜ?
「また入隊希望者が来てるからな!!今から道場で沖田が手合わせするのを見にいくんだ!!」
「総司くんが?」
いやはや総司くんが手合わせなんて珍しい。
最近、屯所には壬生浪士組に入隊したいという人があとをたたない。
入隊希望者は一応剣の腕を見るため、井上さんや山南さんなどが手合わせをする。
それを見て近藤さんなり歳さんなりがその人の入隊を決めているみたいだった。
でも…
今日は総司くんが手合わせするなんて……
相手の人はよほど強いのだろうか。
…だって総司くん、あんなにかわいい顔してめちゃくちゃ強いんだよ!
初めて彼が剣を握ったのを見た時。と言っても壬生寺の境内で竹刀だったけど。
一瞬にして場の雰囲気が変わったのがこの私でもわかった。
殺気。
というものはああいうことをいうのだろう。
少しでも動けば殺られる―…
それから私は極力総司くんを怒らせないようにしてます、はい。
「お前も見に行くか!?」
「…行きます!」
私は怖いもの見たさで、一度握った箒をほっぽりだし芹沢さんのあとをついて道場へと向かった。
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