壬生狼と過ごした2217日
□垣間見えた優しさ
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少し茜色に染まった空の下、歳さんと並んで歩きはじめる。微妙な距離になんだかドキドキした。
「さっきのお店の主人…桝屋さんていうんですか?なんか笑顔が作りものって感じしませんでした?」
「…あぁ。京の奴らは壬生浪士組のことを嫌っているからな」
「え…なんで…」
「…まだお前にはわからねぇだろうな」
歳さんはそう呟くように言うと、空を見上げてふっと笑った。
……む。なんだか意味深な言い方……
んな言い方されると気になるんですが。
…しかし綺麗な横顔だ。
こりゃあ女がほうっておかないだろうな。
歳さんが未来で生きていれば、大方二枚目俳優かモデルってとこだろう。
「んなことより……てめぇ、俺の言い付けをすっかり忘れちまったみてぇだな」
今まで見とれていた顔がくるりと私の方を向き、鬼の表情に様変わりする。
「い、いえ、ほら、習うより慣れろみたいな、ね?」
「うめぇ逃げ方してんじゃねぇよ。……ったく。たまたま会えたからよかったものの…」
歳さんは溜息をつきながら足を止めると、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「…あんま心配かけんじゃねぇよ」
そう言った歳さんの顔も私の顔も…
赤く染まっていたのはきっと夕焼けのせいだろう。
そう思いながら私は一足先に歩き始めた歳さんの背中を追いかけた。
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