壬生狼と過ごした2217日
□浅葱色って何色だ?
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それから数日後―…
「帰ったぞ!!桶水持ってこい!!」
屯所の玄関に懐かしい耳障りな声…ゲフンゲフン!いやいや、勇ましい声が響き渡った。
「ちっ…帰ってきちまったか」
うん。歳さんの舌打ちは聞かなかったことにしよう。
「由香、帰ったぞ」
「あっ!左之さん、お帰りなさい!!」
愛しい旦那様のご帰宅に私は急いで玄関へ向かおうと、広間の襖に手をかけた。
って…あれ?左之さんいつから私の旦那になったんだ?
とにかく左之さん、芹沢さん以外の皆も疲れているだろうから、元気よく迎えてあげなくちゃ!!
私は留守番組とともに桶水を用意すると玄関へと向かった。
***
「芹沢先生、お疲れ様でした」
「あぁ!近藤先生、留守中、何か変わったことはなかったか!?」
「あぁ〜!!近い大坂とは言えどもやっぱ疲れたぜ!」
「永倉くん、きちんと足を洗いたまえ」
「由香、なんも変わったことなかったか?」
「……つーか………誰?」
皆、何事もないかのように話しているが、玄関には三人の男が平伏していた。
「芹沢さん、こいつらは…」
「ん?大丸呉服店の者達だ!」
「この度、壬生浪士組の皆様をお世話させていただくこと、まことに光栄でございます。申し遅れました。私、店主の下村彦右衛門と申します」
真ん中の店主はいちど頭をあげ、笑顔でそう挨拶すると再び平伏した。
「芹沢先生、これはいったい…」
近藤さんが眉をしかめながら芹沢さんに視線をうつすと、ガチャン!!と平山さんが頑丈な箱を取り出した。
「さぁ、大丸!金ならここに二百両ある!!これで皆の麻の羽織、紋付の単衣、小倉の袴を作ってくれ!!」
「かしこまりました。では皆様、寸法を計らせていただきますのでよろしくお願いいたします!」
「さ、あっちの部屋で頼む!!」
芹沢さんの一言を皮切りに、大丸呉服店の人達が動き出し、皆はあっというまに別室へと移動させられていったのであった。
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