壬生狼と過ごした2217日

□序章
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「あ、私も…」


私も一緒に行くという言葉を言い終える前に3人は部屋を飛び出していってしまった。
もはや芹沢さんが街中で暴れるのは珍しいことではないのに……
いい加減、歳さんも堪忍袋の緒が切れたってことだろうか。
歳さんもあんな風に人間らしく感情をあらわにしたりするんだな。
って歳さんは人間じゃないか。

…それよりも総司くんのあの眼。
あの眼は芹沢さんと同じ、人殺しの……

胸底を嫌な予感が走る。
芹沢さんが出ていってすぐ。歳さんにそのことを言えば何かが変わっただろうか。
思ってたより私ってビビりだなぁ…

何も起きなければいいけど……


「気のせい、気のせい!」


私は、ふぅ、と溜息をつくと冷めはじめたお茶が入った湯呑みをゆっくりと口に運んだ。






***


「「「…………」」」


その光景を目の当たりにして、僕らは息をのんだ。

狭い京の街中には火事を知らせる早鐘が鳴り響き、辺りは騒然としている。
目の前には土蔵に向かって笑いながら大砲を打ちまくっている、芹沢さんの息のかかった壬生浪士組の平隊士達。
到着した火消達は平隊士達に鉄砲を向けられ、「水を一滴でもかけたら打ち殺す」と怒鳴られている。

当の芹沢さんは…


「愉快じゃ!愉快じゃ!!」


屋根の上に仁王立ちになり大声で笑っていた。


あの人は…いったい何を……


「…こりゃ会津侯もご立腹だろうな」


隣にいた歳三さんがボソリと呟いた。
いつもは首を突っ込まない僕でもわかる。
会津侯を怒らせればそれだけ壬生浪士組の肩身が狭くなり、居場所がなくなるということ。

あの人はそれをすべてわかってやっているのだろうか。

辺りが騒然となる中、僕達はまるで他人事のように冷ややかな視線を芹沢さんに送り続けたのであった。




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