壬生狼と過ごした2217日

□二人の京浪士
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「ふぁ〜あ…」


皆が一世一代の御所の警備に出掛けたあと。
私だけ寝るのは申し訳ないと思ってしばらく起きていたが、なんせテレビもねぇ、ラジオもねぇ、自動車もそれほど走ってねぇ。なんて歌あったよなぁ…
あ、この時代は自動車もないじゃん。
じゃなくて。

やはり睡魔には勝てず、気付いた時には太陽が真上からジリジリと照り付け、蝉が鳴く真昼間だった。


「お腹空いたな…なんかあるかな……」


あくびをしながら勝手場へと向かって歩いていると…


「由香さん」


フワリとした聞き覚えのある声が背中を追いかけてきた。
この声は…


「楠くん?」

「こんにちは」


振り返るとそこにはやはり、優しい笑顔を浮かべた楠くんの姿があった。
楠くんてば、おかゆみたいな存在だなぁ…
胃に優しいというか、なんか優しいよ、うん。
お腹が空いているからだろう。
馬鹿みたいなこと心の中で思ってみる私。


「あれ?そういえば楠くんは御所の警備に行かないの?」

「はい。皆で行ってしまったら屯所ががら空きになってしまいますから。数人は待機組として残ったんです」

「あ…そっか…」


そうだよね…
こんな不安定なご時勢。
そして京に敵の多い壬生浪士組。
屯所をがら空きなんかにしてしまったらそれこそ何があるかわからな……

ググゥ〜…


「/////!!」


真面目な話をしてる最中なのに、私のお腹がでかい鳴き声をあげた。

うわ////!!く、楠くんにも聞こえちゃった…かな?

慌ててお腹をおさえながらちらりと楠くんを見上げると、また彼独特のフワリとした笑顔をみせた。


「由香さん。昼餉の残りのご飯が勝手場にありますから、握り飯を握ってきましょうか」


や、やはり聞こえてらした…////


「う、ううん////自分で握ってくる…////」


羞恥に耐え切れず、間抜けな笑顔をへらりと見せた時…


「おい、楠!お前に客が来てるぞ!!」


門番をしていたのであろう、一人の平隊士が声をかけてきた。




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