壬生狼と過ごした2217日

□起爆剤は誰だ?
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「歳三さんがグズグズしてるなら、僕が由香さんをいただいちゃおうかなぁ?」


総司の奴…
あんなこと言いやがって…!!

…俺が蓋をしたはずの気持ちにあいつは気付いてやがる。
だが…面白おかしくからかったあいつの冗談にこんなにもムキになって反応しちまうなんざぁ…
俺の蓋ははずれかかってんのかもしれねぇな…

隣にいる…
俺の心を惑わす張本人を盗み見れば、呑気に鼻唄なんぞ口ずさみながら星空を眺めてやがる。

もしかして由香も俺と同じ気持ちなんじゃ…と薄々思ってはいたが、それは俺の自惚れだったのだろうか?


「……歳さん…私の顔、なんかついてます?」

「!!」


気付けば、由香とガッチリ視線が交わっていた。


「っ…!!ま、だ、寝ねぇのかよ?」


く…!!俺としたことが、女にこんなにも動揺するなんて…


「う〜ん…そろそろ部屋に戻ろうかな……でも眠くないんですよ」

「朝…早ぇんじゃねぇのか」

「別に…これと言って予定ないし。あ、皆の羽織を洗濯するぐらいかな」

「…そうか」

「歳さんは?まだ寝ないんですか?」

「…なんだか目が冴えちまってな……眠れねぇんだよ」

「あ…そう、なんですか……じゃあ……」

「…あ?」

「…部屋で愛でも語り合っちゃいますか?あはは」







なんだか気まずい雰囲気を吹っ飛ばしたくて、そう軽く冗談を飛ばしたのだが……


「「…………」」


一変して私と歳さんの間の空気に緊張が走ったのを肌で感じる。


「あ、や、えぇと…歳さ……」

「由香」


歳さんの真っすぐな声に、冗談ですよという言葉は喉の奥にスッと引っ込んだ。
熱を持った視線に胸の高鳴りがどんどん激しくなっていくのがわかる。

やばい…
このままだと引き込まれていく……
気持ちが…
溢れていく……



歳さんは私と交わった視線をプイと逸らすと、そのままスッと立ち上がり私に背中を見せた。


「来い」

「歳さん」

「…わりィ」


それはなんのための謝罪なのか。私に伝わることなく、歳さんは部屋に向かって歩きだす。

そこで…
追い掛けるか否か。

ほんの少し…
ほんの少しだけど迷った私は、スッと立ち上がり彼の背中を追ったのだった。





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