壬生狼と過ごした2217日
□テヘペロは詐欺だと思う
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道場に入ると、案の定、力強く竹刀を振り回す新八さんの姿。
と、その竹刀の矛先にいる面をつけた男。
それに見慣れない顔の男が3人。
そして近藤さんをはじめ、総司くんやら平助くんやらはじめくんやら、ギャラリーの姿が見えた。
「ほら!どうした!もう終わりか!?」
道場の中には意気揚々とした新八さんの声が響き渡っている。
…うん。
素人の私が見てもわかる。相手の人、弱い。
いや、新八さんが強すぎるのかな。
とにかく勝負の結末は見え透いている。
「弱ぇな…」
歳さんの表情がガラリと険しいものに変わった。
「あれ。意外に早いお着きでしたね」
そこへ総司くんが意味深な笑顔を浮かべてやってきた。
もう騙されない。この笑顔は無垢でもピュアでもなんでもないんだから。
「もっと時間がかかると思ってましたけど…クスッ」
「馬鹿かてめぇは」
下ネタ混じりの冗談を、歳さんは一蹴する。
すると総司くんは舌をペロッとだしながら私の方を見て肩をすくめた。
…かわいいじゃねぇか、馬鹿野郎////
「鬼の副長の時は冗談も通じないんですね〜…あ、いつもか。こりゃあ由香さんも苦労するなぁ」
「んなことより、今新八が相手してる奴の名はなんてぇんだ?」
「あの方は御倉伊勢武さん。"一応"京浪士の方です」
「へぇ…」
二人が会話を交わすそのずっと向こうに。
スッと身を隠したように手合わせを見つめている知った顔が目に入った。
あ、あれは…
私はその影の方に足を向けた。
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