壬生狼と過ごした2217日
□テヘペロは詐欺だと思う
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「楠くん!」
背後から私がそう声をかけると、その影は驚いたようにビクリと身体を震わせた。
「あ…!由香、さん!」
でも、驚いた次の瞬間。
私の姿に気付くと、あの天使のようなほんわかした微笑みが向けられた。
うんうん。
本当の無垢な笑顔っていうのはこういうことを言うのよ!
私、もう騙されないんだから!
「今日は非番?」
「はい。新しい隊士の方々が入られたんですね。永倉さんと手合わせしてると聞いたので見に来ました。しかし永倉さんはお強いですねぇ」
僕なんてとても敵わないや、と苦笑いする楠くん。
その顔は思わず見とれてしまうほどかわいい。
敵わなくて大丈夫!むしろお姉さんが守ってあげる!!
なんて言葉が口から滑りそうだ。
ついその笑顔に見いっていると、楠くんは不思議そうに首を傾げた。
ありゃ、ヤバイ。このままだと変態姉さんだ。
私はヘラリと笑うと、話題を変えようと慌てて口を開いた。
「ど、どうやらさ、ここだけの話…新しく入隊した人達は長州天誅組だったらしいよ?」
「長州天誅組!そうなんですか!」
…ん?あれ?なんか反応が…
「もしかして知ってた?」
「え…!?いえ!!」
「本当驚いてる?」
「は、はい!知りませんでしたよ」
なんだか楠くんの態度がおかしいように見えたんだけど…
まぁ、知っていようが知っていまいが、そんなたいしたことないよね。
私は「そっか」と言ってニッコリと笑ったのだった。
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