壬生狼と過ごした2217日

□守るべきもの
3ページ/5ページ




「そりゃあ、未来の日本のために決まってんじゃんか!」

「未来の、日本…」

「おう!」

「で、でも未来には武士は…」

しまった。
予想外の平助の答えに思わず余計な事を口にしてしまった。
ど、どうしよう…

とりあえず笑っとけと思い、ヘラリとごまかせば、平助は「やっぱそうか」と笑った。


「ご、ごめん平助」

「ばーか、なんでお前が謝るんだよ」

「だ、って、刀を振るう意味を見失うって…」

「ああ、見失うとこだったよ。未来に武士がいたらな」

「は?」


ちょ、よくわからん。未来に武士がいないのは平助にとっていいことなのか?
なんで、なんでだ?


「へ、平助」

「なんだよ」

「平助は未来に武士がいないこと、ショック…じゃなくて衝撃?ええと、悲しくないの?今自分が誇りを持ってやってる武士がいなくなるんだよ?」

「悲しいわけねぇじゃん!だってさ、他の奴はどうかわかんねーけどさ、俺は未来の日本を平和にするために刀を振るってるんだからさ!武士がいるってことは、無駄な斬り合いも少なからずあって、流れなくてもいい血が流れるってこともあるし。それじゃ完全に平和ってわけじゃねーじゃんか」

「………」

「俺はさ、誰もが幸せで、誰もが笑ってる平和な国を作りたいんだよ。この時代のように無駄な血を流すなんてことあっちゃいけない」

「………」

「人を斬るのは容易なことじゃねーからな、刀を振り回して地獄に落ちるのは俺達だけで充分!」

「平助…」

「おっと!こんなこと言うと怒られちまう!土方さんには内緒だぞ」


そう言って笑った平助は、若干17歳の少年にはとても見えないくらい大きくて。
この時代にもこんな風に考えてる人がいるんだと思うと、私の胸に溜まっている何かが少しだけ消えた気がした。


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ