壬生狼と過ごした2217日
□守るべきもの
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「そりゃあ、未来の日本のために決まってんじゃんか!」
「未来の、日本…」
「おう!」
「で、でも未来には武士は…」
しまった。
予想外の平助の答えに思わず余計な事を口にしてしまった。
ど、どうしよう…
とりあえず笑っとけと思い、ヘラリとごまかせば、平助は「やっぱそうか」と笑った。
「ご、ごめん平助」
「ばーか、なんでお前が謝るんだよ」
「だ、って、刀を振るう意味を見失うって…」
「ああ、見失うとこだったよ。未来に武士がいたらな」
「は?」
ちょ、よくわからん。未来に武士がいないのは平助にとっていいことなのか?
なんで、なんでだ?
「へ、平助」
「なんだよ」
「平助は未来に武士がいないこと、ショック…じゃなくて衝撃?ええと、悲しくないの?今自分が誇りを持ってやってる武士がいなくなるんだよ?」
「悲しいわけねぇじゃん!だってさ、他の奴はどうかわかんねーけどさ、俺は未来の日本を平和にするために刀を振るってるんだからさ!武士がいるってことは、無駄な斬り合いも少なからずあって、流れなくてもいい血が流れるってこともあるし。それじゃ完全に平和ってわけじゃねーじゃんか」
「………」
「俺はさ、誰もが幸せで、誰もが笑ってる平和な国を作りたいんだよ。この時代のように無駄な血を流すなんてことあっちゃいけない」
「………」
「人を斬るのは容易なことじゃねーからな、刀を振り回して地獄に落ちるのは俺達だけで充分!」
「平助…」
「おっと!こんなこと言うと怒られちまう!土方さんには内緒だぞ」
そう言って笑った平助は、若干17歳の少年にはとても見えないくらい大きくて。
この時代にもこんな風に考えてる人がいるんだと思うと、私の胸に溜まっている何かが少しだけ消えた気がした。
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