壬生狼と過ごした2217日

□守るべきもの
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「ふぁ〜あ…」


最近の私はというと…


「…でっけぇあくびだな!」

「…あ、平助」

「なんか久しぶりにお前のこと見た気がする」

「…そう?」


一日中部屋にこもって、なにをするでもなくボーッと過ごしていた。自分から皆に話しかけることもなかったし、誰かが私の部屋を訪ねてくることもほとんどなかった。
今日はたまたま縁側で気分転換してたところに偶然平助が通りかかったのだけれど…


「…土方さんと喧嘩でもしたのかよ?」

「別に。してないよ」

「最近、全然一緒にいねぇじゃん」

「だって用事ないし」

「用事ないしって……恋仲なんだろ?土方さんと」


恋仲…
だったのだろうか、私達は。

…芹沢さんのことがあってから、私と歳さんが一緒にいることはほとんどなくなった。
お互いがお互いを避けている、といったほうが正しいだろう。
まるで今までのことなんかなかったかのように。

私と歳さんが恋仲だったかなんて、今となってはそんなのどうでもいいことだ。
だって私の好きだった歳さんはもうどこにもいないもの。
いるのは瞳の奥に牙を潜めた鬼だけだ。


「恋仲なんかじゃないよ。身体だけの関係」

「な…////!」


そう言えば、平助の顔はみるみるうちに真っ赤になった。

おや…?確か平助は17才。もしかしなくても、こりゃはじめくんと同じ類いの女に奥手ってやつですか?
この反応は間違いなく童貞…かしらん。
むふふ、ピュアボーイ万歳!

などと逆セクハラまがいなことを考え一人ニヤニヤしていると、張本人の平助と目が合い、真っ赤な顔のまま「な、なんだよ////!」と言われた。

と、藤堂くんめ…
年下苦手ですが、そんな顔されると激しく萌えるじゃねーですかい!!


「ふふ、平助ってばかわいい奴め」

「う、うるせーよ////!!」


あぁ、こいつってば弟みたい。

平助の頭をわしゃわしゃと撫でてやれば、ピュアボーイはその顔をますます真っ赤にさせたのだった。


「つ、つーか////!!なんかあったのかよ!お前、最近部屋にこもりっきりじゃんか。新ぱっつぁんとかも心配してたぞ!」


そう言って真っ赤な顔のまま手を振り払った平助だったが、交わった視線は私を心配する目、そのものだった。
なんだかその視線に嫌気がさし、プイと目をそらす。

…平助は優しい。巡察中に野良猫を拾い、かわいそうだと言って屯所に連れて帰ってきてしまうような奴だ。きっと私に対してそれと同じような感覚でいるのだろう。

年齢は若くとも、皆に気遣いができてやはり勘が鋭いのであろうこの男はきっと気付いている。
あの日から別人のように鋭さを増した歳さん。 そんな歳さんを私が受け入れられなかったということ。そしてそんな私が一人ぼっちだと感じているということも。
だからきっと…優しい平助はわざわざ私の様子を見にきてくれたんだと思う。
…だってここの縁側は、普段皆が通ることのない裏側の縁側だから。


「大丈夫だから。ありがとう」

「…そっか」


でも…今はそんな平助の優しささえ受け入れられないほど、私の心には余裕がないというか…
この"壬生浪士組"、そしてなによりこの"時代"に対して嫌悪感を抱いていた。


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