壬生狼と過ごした2217日

□世の中は理解し難い事ばかり
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……ん

…おも、い……

……もしかして…金、縛り?


息苦しさを覚え、徐々に意識がはっきりしてくる。

ど、どうしようどうしよう
お岩さんが『いちま〜い、にま〜い』って皿割ってたらどうしよう。
落武者が髪の毛振り回してたらどうしよう。

……こぇぇぇ!!!
あああ、でも目を開けなきゃ!いつまでもこのままでいるわけにはいかない!

意を決して恐る恐る目を開ける。


目の前にいたのは……

……
………
…………

「…ぎゃあぁぁぁ!!!」

「おまっ、もっと可愛いげのある声で叫んだらどうだ!?」

「た、高杉さんんんんん!?」


なんで!?なんで!?なんで高杉さんが私の上に乗ってるの!?夕べ一緒に寝たっけ!?
つうか裸じゃないよね!?入ってないよね!?穴無事だよね!?

高杉さんを押し退け着物を確認すれば、当の高杉さんはニヤリと笑った。


「残念だが抱いてないぞ!!」

「何が残念なんですか!!もう!」

「ハハハッ!そう怒るな!!ま、いい感じのはだけ具合に少し勃ちかかったけどな!!」

「いや、そこは全部勃ってくださいよ!」


そう言えば高杉さんは声を出して笑った。
いや、笑い事じゃないですからマジで!
もうなんなんだこの人は!言動がまったく読めねぇぞおい。


「んで、どうしたんですか。朝から可憐な乙女の上なんかに乗って」

「可憐?くくっ、お前がか!?」

「ええと、刀借りていいですか」

「悪かった悪かった!!」


全然そんなこと思ってねーでしょ。
だって楽しそうに笑ってるもんね!コラ!


「で?なんすか本当に」

「あれだ、夕べお前に名前聞くの忘れてな!」

「へ…名前?」


そうだ。そういえば私、自己紹介してねーや。言うタイミングがなくてすっかり忘れてたよ。
つか高杉さんも名前も知らない女をよく泊めてくれたなぁ…
そこはだいぶ感謝だ。


「あ、申し遅れました。私、野村由香と言います」

「野村由香、か。顔に似合わずいい名前だな!」

「こら!てか高杉さん。もしかして名前を聞くためだけに夜這いもどきに来たんですか」

「夜這いもどきとは失礼な奴だな!もうすぐ朝餉だからな、一緒に食おうと思って起こしにきてやったんだ!」

「あさ、げ」


高杉さんとの会話に夢中になってて気付かなかったけど、辺りはもうだいぶ明るくなってきていた。

あれだけ色々あったからよく眠れないかなと思ってたけど、そこは人間の性。精神的にも身体的にも疲れが勝ったらしく熟睡しちゃってたみたいだ。


「ほら!さっさと支度しろ!今日はお前に一日付き合ってもらうからな!飯食ったら出掛けるぞ!!」

「出掛ける?ってどこへ…」

「いいから早くしろ!」


ニカッと笑った高杉さん。
……むむむ、八重歯が素敵じゃないか。


「ちょ、着替えるんで出てってもらえます?」

「なにを恥じらうことがある!未来の愛人だぞ俺は!!」


もうね、破天荒さんは話すだけで大変です。
無言で肩パンしたら、高杉さんは「先…行ってるな…」と、部屋を出て行きました、はい。



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