壬生狼と過ごした2217日

□覚悟が決まりゃ腹が据わるってもんだ
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な、んで急に……


「な、に言って…」

「ごまかさなくていい」


高杉さんの目は真剣そのもの。

やっぱり…桝屋さんは私のこと覚えてたんだ。きっと店の奥に引っ込んだ時、高杉さんに伝えたのだろう。


私が新選組と繋がっていたことは事実。
歳さんと関係があったことも事実。
悪気があって隠してたわけじゃないけれど、結果的に高杉さんに嘘をついていた。
私はあざとい。自分の身を守ることしか考えていなかった。ここまできてまだ隠そうとしてる。


なにもかも…話そう。高杉さんに。お世話になっている以上、嘘偽りを貫き通すのはいけない。これで放り出されたり殺されたりすれば、それは私の宿命というものだ。

ぎゅっと拳を握り、すぅっと息を大きく吸い込んだ。


「私…、この前まで新選組にお世話になっていました」


黙って私の言うことに耳を傾けてくれている高杉さんに、私は今まであったことをすべて話した。
タイムスリップしてきた時のことも。
歳さんに惹かれ、そして彼も同じ気持ちでいてくれたことも。
新見さんや芹沢さん、お梅さんのことも。
そして…屯所を飛び出したきっかけにもなった楠くんのことも。


でもなぜか高杉さんは楠くんのことはおろか、御倉さんや荒木田さんのことも知らなかった。
でも確かに彼らは長州の間者だったはず。もしかしたら偽名を使っていたのかもしれない。今となってはどうでもいいことだ。



すべてを話し終える頃には、いつの間にか鈴虫の鳴き声は止んでいた。
沈黙が私と高杉さんの間を駆け抜ける。


「土方のこと…まだ好きなのか?」

「………」


空を見上げれば満天の星空で。
こんなに空は綺麗でなんの曇りもないのに、どうして…


「…私ね、母親が大好きな子だったんです」

「………由香?」

「でも母は体が弱くて…何度も入退院を繰り返してた」

「………」

「母は私の子供を見るまでは死ねないって…辛い治療にも耐えて耐えて…必死に病と…死と戦ってたの」
「けどね、私が中学生の時に病状が悪化して…たくさんの器械とチューブに繋がれて…それでも懸命に生きようと戦って……結局は負けてしまったけど」

「………」

「…未来ではね、高杉さん。人一人の命を助けるのに、皆必死なんですよ。なのにこの時代の人は…新選組の皆はその命をいとも簡単に奪ってしまう。それが昨日まで仲間だった人でも」


気が付けば頬には涙が伝っていた。
もう大丈夫だって。 もう笑って生きていける、そう思っていたのに。


「歳さんが信じられなかった…!馬鹿野郎って…。けどね、そんな人をそれでも愛しいだなんて思ってる自分はもっと大馬鹿野郎なんです!!」


最後はもう声にならなかった。



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