壬生狼と過ごした2217日
□ゴミはすぐにゴミ箱に
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この声は…
「はじめくん!」
「!!」
部屋の中に鬼の副長がいると思っていたのだろう。予想外の私の登場に心底驚いた表情を見せた。
かと思えば途端に真っ赤になり固まるその表情。
「すっ、すまぬ////!!ま、さか副長の部屋に寝間着、姿のあんたがいる、とは…/////!!」
ああ、そういえば私ってば寝間着姿だった。しかも袖を通しただけで帯はしていない。一応手でおさえてはいるが、胸元はだいぶはだけている。純情生真面目人間のはじめくんにとって少々刺激が強すぎたか。
でもこんなことで狼狽えるはじめくん、可愛すぎる。ちょっとからかいたくなってしまう私はやはり人より節操がないのだろうか。
「あ、ごめんねこんな格好で」
「い、いや/////それ、それ、それより副長は…」
噛みまくってるはじめくん。ああもう!!お姉さん、ムラムラしちゃうよ!!!
「歳さんなら朝一番の巡察だよ。もう少しで帰って来ると思うんだけど」
ニッコリ笑って顔を覗きこめば、「そ、そうだった!忘れていた」としっかり目線を外された。ああ、はじめくんもいただきたいと思ったのは絶対に内緒だ。
…あ!そういえば!!
「で、は、また出直してくる」
そう言って踵を返しかけたはじめくんの腕を咄嗟に掴んだ。ハラリ、と寝間着がはだけて、ちょっと見せちゃいけないもんがはじめくんの目に飛び込んだらしく、視線はそこに釘付け。耳まで真っ赤になってしまったが、そんなことどうでもいい。
私ってばナイスアイデア!!こりゃ、歳さんが帰ってくる前に…と、そのままはじめくんを部屋へと引き摺りこんだのであった。
***
「……で。その手紙を俺に読んで聞かせろというのか」
「お願い!!」
パン!と両手を合わせる私を見て、はじめくんは大きく溜め息をついた。
「そんなこと、できるわけがないだろう」
生真面目の塊であるはじめくん。
予想通りお断りの言葉が私の耳に届いた。
でもね、私はあなたの弱味を握っているのよ?
人様の手紙を読もうと思ったり強迫したりして最低だと思われるだろうが、どうしても読みたい。いや、なんだか読んでおかなくちゃいけない気がした。
「……じゃあ私の豊満な胸、はじめくんにばっちり見られたこと、歳さんに言っておくね」
「なっ…/////!!?そ、それはあんたが寝間着の手を離すから…////俺はわざと見たわけじゃない////!!」
「でも見たんでしょう?桃色の先端までしっかりと」
そこまでハッキリと言って笑えば、はじめくんは私のおっぱいを思い出したようで顔を赤らめ「く…////!!」と唸った。
あれれ?はじめくんてば童貞だっけ?
いや違うよな?昔女いたって言ってたもんな。この子はあまり自分を語らないからよく覚えていないが。
どちらにせよはじめくんが可愛すぎる純情なのは確か。
そして…
「……あいわかった」
副長にそんなこと言われちゃたまったもんじゃない、ということははじめくんだけじゃなく誰もがそう思う事実。
私の思惑通り、はじめくんは首を縦に振ったのであった。
「見せてみろ」
「これなんだけど」
クシャクシャになった紙を広げて渡せば、盛大な溜め息とともに視線を紙に落としたはじめくん。
ごめんね、別にはじめくんをいじめるつもりはないのよ、おねーさんは。
「…なんて書いてある?」
「…………やはり読んでは」
「私のおっぱい、でっかかった?」
「…………」
コイツ、読まない気だなと察知し、気が変わらないうちに再び脅せば、はじめくんは意を決したように「どうなっても知らぬからな」と小さく呟いた。
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