壬生狼と過ごした2217日

□ゴミはすぐにゴミ箱に
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「お帰りなさい、副長どの」

「お、おう」


私が纏うヘタレの殺気に、どうやら何かおかしいと奴も気付いたらしい。
寝間着姿の私がはじめくんと二人きりでいるのに、そこを咎めることはしなかった。

さて、どうしてくれようか。
とりあえず、ここにいては被害者になってしまうかもしれないはじめくんを逃がしてあげよう。


「はじめくん。本当にありがとう。あとは自分でなんとかするから」


そう言ってニッコリ笑えば、はじめくんは若干狼狽えつつ歳さんに目配せしているようだった。逃げて、ガチで逃げて、なんて言ってるんだろうが、ぜってぇ逃がさねぇ。
「私と歳さん、これからイイコトするから」と半ば無理矢理部屋を追い出し襖をピシャッと閉めれば、部屋の中はしぃんと静まり返った。


「……おい、一体どうしたってぇんだ?」


ドカッと腰を下ろして胡座をかいた男、と書いてバカと読む。
男の目は戸惑いを隠せていない。


「…歳さん、イイコト、しましょうか」

「ああ?まだ昼間…」


昼間だぞ?の言葉を最後まで聞くことなく、男をそのまま力一杯押し倒せば、不意討ちだったのか意外にもすんなり倒れた。


「おい………ッッッ!!!!!」


そして次の瞬間。
男は声にならない声を上げた。
それもそのはず。わたしの手にはしっかりと奴の自慢の"モノ"がしっかりと握られていたわけだからね!
袴の上からだろうがなんだろうが関係ねぇ。徐々に力を入れれば、奴は益々腰を浮かせて唸った。


「随分とおモテになるようで」

「あ゙ぁ゙!!?なんのこと…〜ッやめろ、やめてくれ!!」

「わっちが知らんところで随分と遊女をタブらかしてるんでありんすね。さすがは土方センセでありんすなぁ。なんせ手紙で自慢するくらいでありんすからなぁ?」


わざと廓言葉を使いメキメキと力をこめれば、男は情けない掠れ声を出した。


「ちがっ…あれは…!!頼む!頼むからやめてくれ!!!」

「うふふ、何が違うんでしょう?土方セ・ン・セ」








***


ま、このあとも私の圧倒的な攻めと、歳さんの必死な抵抗は続いたわけで。
鬼の副長でもやっぱりここは弱いのね、なんて若干Sっ気が芽生えてしまったわ。だって攻められる歳さんもなかなか可愛いんだもの。
結局、歳さんのお上に誓って今はヤッてねぇ!の言葉を信じる次第となりました。ううむ、私ってば優しい。


ちなみにあとから知った話だが、部屋を追い出されたはじめくんはどうやらすぐそばの廊下で立ち聞きしてたらしい。
後日、「あんた、副長に何をしたんだ?」なんて純真無垢な顔でそう聞いてくるもんだから、またちょっとからかってやりました。
「歳さんのアレを握って啼かせていたのよ」
そう耳元で囁けば、ボンッて音がするんじゃねーかってくらいに真っ赤になってたな。
もう、可愛いんだからはじめくんってば!!
























有名すぎるこの手紙。
文久3年11月、遊女から貰ったたくさんの手紙と共に多摩の小島鹿之助に送ったと言われています。
まぁ、江戸時代にあれだけ端整な顔立ちをしてりゃモテモテだったのも納得がいきます。
ただ、どの遊女とも遊びの関係だったらしく、近藤のように遊女の身請けをすることはありませんでした。『君菊』という舞妓は歳三の子を産んだとされていますが(女の子)、その子も生後間もなく亡くなってしまったそう。
なので歳三の直結の子孫は残念ながら途絶えているそうです。

ちなみに手紙の全文と略です。


寒中のいみぎり、いよいよ御壮健に御座あらせ られるべく、恐悦に奉り候。ついては、この方 一同、無事に罷り在り候間、恐れながら御休意 下さるべく候。
しからば過二十一日、松本捨助 殿上京仕り、壬生旅宿へ向け参上、如何の義こ れ有り候や計り難く、これによりひとまず下向 致させ候間、かれこれよろしく願い上げ奉り候。

一 久々御無音に罷り過ぎ、何とも恐れ入り候えども、小子の筆にては京師形勢申し上げかね 候間、承りたき折ながら、これ御無音申し上げ候。御推察の上御許し下さるべく候。末ながら、小嶋御両親様御はじめ、御一同様へよろしく願い上げ下さるべく候。何卒右の段上溝にもよろしく願い上げ奉り候。

一 松平肥後守御預り新撰組浪士、勢い日々相増し、これにより万々松本氏より御承り下さるべく候。恐々不備

十一月日 松平肥後守御預り 土方歳三 小島兄参



尚々、拙義ども報国有志と目がけ、婦人慕い候 事、筆紙に尽し難し。まず島原にては花君太 夫、天神、一元、祇園にてはいわゆる芸妓三人 程これあり、北野にて君菊、小楽と申し候舞 子、大坂新町にては若鶴太夫、外二三人もこれ 有り、北の新地にては沢山にて筆にては尽くし 難し、まずは申し入れ候。

報国のこころを忘るる婦人かな

歳三いかがわしき読み違い

今上皇帝
朝夕に民安かれといのる身のこころにかかる 沖津しらなみ

一 天下の英雄御座候わば、早々御登らせ下さるべく候。

以上 小嶋鹿之助様

***

寒い季節ですが、お元気ですか。 こちらはみんな元気にしていますので、安心してくださ い。

先日の21日、松本捨助さんが京都にやって来て壬生村屯所に来ました。どうすればいいのかわからなかったので、とりあえず帰郷させることにしました。いろいろよろしくお願いします。

1.長い間手紙も出さず、なんともすいませんが、私が書くような手紙では京都の状勢は伝えきれないので、手紙を出したいとは思いながらも、そのまま手紙を出しませんでした。 私の気持ちを察して、どうか許してください。

最後になりましたが、小島家の両親(鹿之助の)をはじめとして皆さんへよろしくお伝えください。どうかこの事は上溝村へもよろしくお伝えください。

1.松平肥後守(松平容保:会津藩)のお預かりになった新選組は、日々活気づいています。(この事は)松本さん(捨助)より詳しく聞いてください。それでは。

11月 松平肥後守お預かり 土方歳三より 小島兄さんへ

あと、私達が報国の士であるのに目を付けては女性が慕ってきて、手紙に書き切れません。 とりあえず京都には島原の花君太夫に、天神や一元、 祇園ではいわゆる芸妓と呼ばれる女性が3人ぐらいいて、 北野には君菊や小楽という舞子、大坂新町に行くと、若鶴太夫の他にも2,3人いるし、北の新地ではたくさん過ぎて書ききれないので、とりあえずこれだけ書いておきます。

報国の心を忘るる婦人かな

なんちゃって。

今の天皇様(孝明天皇の歌)。 朝夕に民安かれと祈る身の心にかかる沖津しらなみ

1.志のある強者がいたら、すぐに京都に向かわせてください。では。



天皇の歌と自分の歌を並べる歳三に萌える。



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