壬生狼と過ごした2217日
□ゴミはすぐにゴミ箱に
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「…なぁ、もう一回いいか」
再び胸元を弄り始めた大きな手をパチンとはね除ける。
「やです。眠い。それにそろそろ巡察の時間じゃないんですか。副長が遅刻だなんて示しつかないですよ」
グイと厚い胸板を押し退け一気に捲し立てれば、わがままなバラガキは「チッ、わかってらァ」と舌打ちしながら身体を起こし、のそのそと着替え始めた。
チラリとその様子を見上げればその顔は明らかに拗ねてて、可愛いのなんのって。
そして追い討ちをかけるかのように髪をかきあげる仕草に私の心はドキュンと撃ち抜かれましたよもう。
なんだなんだ、なんなのこのイケメン!!
こんなイケメンに先程まで全力で愛されてなんて、思い出すだけでちょっとまんまんが濡れちゃうじゃないかよこの野郎!
なんて痴女ちっくなことを考えてニヤついていれば、男は浅葱色の羽織を肩にかけたままクルリとこちらを振り返り、先程までのわがままなバラガキはどこへやら。
今度は鬼の副長の顔を見せ、「続きはまた今夜だ」そう言ってもう何度目になるだろう、私の唇を塞いだ。
ああ、歳さんのこんなところも大好き。
***
朝一番の巡察に出た歳さんをそのまま布団の上で見送り、再び眠りについた私。
次に目が覚めた時には外はかなり明るくなっていた。
頑張ってる歳さんに対してちょっと申し訳ないかなぁなんて思ったりもしたけど、やっぱ人間、睡魔には勝てないよ、うん。
しかしあの男。朝から腰振りまくって発射して疲れたりしねーんだろうか。確かもう、アラサーだったと思うんだけど。
つうかあれだけいい"モノ"持っててテクはあるし、イケメンだしで、やっぱ島原でもモテるんだろうなぁ…
今はおめぇがいるから、なんて言ってヤッたりはしてないらしいけど、昔はまぁそれなりに遊女をアンアン啼かせてきたんだろうし、島原には行ったりしてるからきっと今でも泊まっていってと誘われたりはしてるんだろうな……
………こんなこと考えちゃってなんだかすごく悪い目覚め。
意外に私ってば嫉妬深いのかもしれない。
とりあえずそろそろ起きようか。
下手したらあと少しで歳さんが巡察から帰って来ちゃうかもしれない。だいぶ寝てたからね、えへへ。
もう昼だってのに布団でゴロゴロしてたらなんて女だってあきれられちゃうぜ。
んん〜…と伸びをして脱ぎ散らかした寝間着に袖を通す。よし!と立ち上がれば、ふと、綺麗に整頓されている文机の上にグチャッと丸められた紙が目に入った。
なんだろう?仕事の書き物かな?
そう思って広げてみるも、中身はにょろにょろとした文字が書かれ、なんて書いてあるか全然読めない。
「んん〜?小、島?小島…なんとかの助?」
文面のはじまりが人の名前っぽい。
ってことは手紙?
……もし手紙だったら書き損じとは言えども盗み見はよくない。
け れ ど
ぶっちゃけ気になっちゃうよね!?だって好きな人が書いた手紙だよ!?
ちょっとだけ。ちょっとだけならいいよね!?
そう思って必死に手紙とにらめっこする私は、現代では平気で彼氏のケータイとか見てましたが何か?
意外に女々しいです、はい。
しかし睨めども睨めども、手紙にはなんて書いてあるかわからない。
もうあきらめようか…
そう思って手紙を文机に置いた瞬間。
「副長」
静かな声が襖の向こうから聞こえた。
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