壬生狼と過ごした2217日

□孤独な男の過去と未来
1ページ/3ページ




さてさて。
ふと空を見上げればお天道様は空の一番高いところからすでに下りの弧を描きはじめていた。

歳さん達、将軍様を警護し隊が大坂へと出発してから早数時間。
しっかり昼寝をして、しっかりお昼ご飯を食べて屯所内をフラフラしてみるものの…


「…暇である」


いつもはやれ巡察だ、やれ斬り合いだ、なんて忙しい新選組もさすがに三元日はお休みだ。
せっかくの正月休み。歳さん達、警護隊には悪いけど私もこの時くらいは好きなことしたい。
まぁ、いつも自由に行動させてもらってるけどな。
でも好きなことってなんだ?酒くらいしか浮かばないなんて、やっぱりアル中か私は。

とりあえず左之さんや新八さんと酒でも呑もうと思って部屋を訪ねてももぬけの殻。総司くんもいない。
よく見れば隊士たちの姿も大半が見当たらないじゃないか。
あれ?おかしいぞ?
屯所内はいつもの喧騒が嘘のように静まり返っていた。

…にしても静かすぎじゃね?

不思議に思い、たまたま勝手場で熱燗を作っていた隊士を見掛けた私は適当に挨拶を済ませ、他の隊士はどうしたのか聞いてみることにした。


「あの、幹部とか他の隊士の姿が見えないんだけどなんか知ってます?」

「今日は島原で太夫の顔見世があるんですよ。皆、昼前にそちらに出掛けてしまいました」


………はぁ?
昼前っつったら…全開お昼寝タイムじゃん!!
くっそー、もしかしなくても置いていかれたのか私。出掛けるんなら誰か一人くらい声をかけてくれればいいのに薄情なやつらめ!!
せっかく江戸時代にいるんだから、太夫の顔見世、私も見たかったなぁ…
あ、でも皆そのまま島原で呑んでくるんだろうな。
…いいさいいさ!どうせ私はお邪魔虫。

不貞腐れた態度を見て、目の前の隊士も置いていかれた私を不憫に思ったのだろう。「あの、これよかったら」と熱燗を一本くれた。そして私にとっては超朗報をもたらしてくれた。


「あ、でも斎藤さんは屯所に残ってるはずです。顔見世には興味がないと言っていましたから」

「え!?本当!?」


新年早々ついている。今年の私は宝くじに当たるほどの強運を持っているかもしれない。
まぁ、この時代に宝くじなんてねーんですけどね。
とにかくラッキーだ。だってはじめくんてばからかいがいのある可愛い子なんだもの。
今日の獲物は決まった。

私はそのまま隊士の隣で熱燗を何本か作り、猛ダッシュで被害者、もとい、はじめくんの部屋へと向かったのだった。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ