壬生狼と過ごした2217日

□男のロマン
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「隊での決まり事…いわゆる局中法度を作ったんだが」


ある朝。
毎日隊士全員で行われる朝礼のようなものの中で近藤さんが声を張り上げた。

日に日に増えていく隊士達の中には、腕に自信があるジャイアン的な乱暴者も少なくない。
その人達をまとめあげるにはやはり決まりがないと…と、先日からずっと歳さんが考えているようだった。


「では今から読み上げる!!

一つ、士道に背き間敷事。

一つ、局を脱するを不許。

一つ、勝手に金策致不可。

一つ、勝手に訴訟取扱不可。

一つ、私の闘争を不許。

右条々相背候者切腹申付べく候也。


以上だ!」


近藤さんが読み終えると、辺りがザワザワと騒ぎはじめた。

えっと…そんな驚くことなのだろうか。
ぶっちゃけ私には意味がよくわからない。いい加減、この時代の文章というか文字というか、覚えたほうがいいかもな…


「…あの…新八さんは近藤さんが言ってた意味、わかります?」


隣に座っている、夕べ島原で飲み過ぎたのであろう、グッタリとしている新八さんに些細な疑問をぶつける。


「…おい、由香ちゃんよ、それはただ純粋に聞いてんのか?それとも俺は理解してねぇとでも思ってんのか?」


そりゃあ後者に決まっ…なんて思わず口走りそうになったが、グッとこらえヘラリと笑ってみせる。


「…まぁいい。んじゃ由香ちゃんのために簡単に説明してやるよ、いいか…?
てめぇら、武士らしい振る舞いをしろ!
壬生浪士組を抜けることは許さねぇ!
勝手に借金するんじゃねぇ!
勝手に裁判するんじゃねぇ!
私闘はするんじゃねぇ!
それが守れねぇ奴らは切腹だァ!!
…ってとこか。それより今の土方さんに似てただろう!」

「はぁ…」


満面の笑みでにじり寄ってくる新八さんに愛想笑いをこぼす。

切腹…
切腹って…自分で腹斬るあれだよなぁ……
随分と怖い規則を作るもんだ、歳さんてば。
ざわめく隊士の中で、凛としたオーラを放っている歳さん。

最近、随分と遅くまで起きてたみたいだったけど…
体調は大丈夫かな。

歳さんが書いた局中法度は額に飾られ、広間の上座にでかでかと掲げられたのだった。



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