壬生狼と過ごした2217日

□溢れ始めた気持ち
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道場への道のりをとてとて歩く。
左之さん、いるかなぁ…なんて思いながら私は空を見上げる。

…さっき歳さんに掴まれた肩がなんだか熱い。
歳さん…いろんな女をあぁやって押し倒したりしてんのかな…
そう思ったらなんだか胸まで痛くなってくる。

……くそぅ。

私は胸底で溢れ出る気持ちに気付かないふりをし、頭をブンブンと振った。


「由香?何やってんだ?」


聞き覚えのある声に思わず動きを止める。
この声は…


「左之さん!遊ぼ!!」


満面の笑みで後ろを振り返ると、そこには左之さんと平隊士の姿があった。
あ、やべ…平隊士が……

左之さんは引き攣る私を見て、苦笑いをこぼした。


「どうした?暇なのか?」

「あ…はい……ちょっとだけ」


へへ…と笑ってごまかすと、平隊士と目が合った。
……あれ?この人、どこかで……
思わず首を傾げる。
するとその人はフワリと優しく笑い…


「こんにちは、由香さん」

「あ……楠くん?」


私がそう問い掛けると、またフワリと笑った。


「…なんだ?お前ら知り合いか?」

「あ…この前の角屋の時にちょっとだけ……」

「あぁ。お前と土方さんが逢引きしてた時な」

「違うっつの////!!」


私が土方さんのことを好きだと思いこんでる左之さんと新八さんは、こうして私のことをよくからかうようになった。
こういう言動が私の気持ちを後押ししてるんだからたまったもんじゃない。


「左之さんは…楠くんと知り合いなんですか?」

「知り合いっていうか…まぁ、こいつが入隊した時に手合わせしたのが俺だしな。その流れで毎日稽古つけてやってんだ。な!」

「はい!」


楠くんの頭をわしゃわしゃと撫でる左之さんは、まるでお兄ちゃんのようで、楠くんを弟のように思ってるのかもしれないなぁ…なんてことが容易に想像できた。


「んじゃ、休憩もかねて皆で縁側で茶でも飲むか?」

「はい!!」

「あの…じゃあ、僕はこれで…」


そう言いかけた楠くんに左之さんは笑いかけた。


「ばーか。お前も一緒に、だ」


左之さんのその一言に、楠くんは嬉しそうに「はい!」と返事をした。

さすが左之さん!なんだかやることなすことカッコイイぜ!
そう思いながら私は「お茶の用意してきます!」と勝手場へと走りだしたのだった。


「転ぶなよ〜」


優しい気遣いが背中を追い掛けてきた。
……もしかしなくても、左之さんが壬生浪士組一番のPーBOYなのかもしれない。




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