壬生狼と過ごした2217日
□いつから違った俺達の道
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大和屋の焼討は結局夜通し行われ、すべてが終わったのは次の日の昼過ぎ―…
「帰ったぞ!酒だ!誰か酒を用意しろ!」
そう叫ぶ声と共に、幹部の皆が集まる広間にドシドシと足音が近付いてきた。
―スパン!!
「やぁやぁ皆さん!これはお揃いで!」
すでに外で酒を飲んできたのだろう。芹沢さんは陽気な声でそう言うと、ドカッと上座に腰を下ろした。
と同時に、平山さん、野口さん、平間さん達も酒を持ち広間に入ってきて腰を下ろす。
ワイワイと酒を酌み交わし始めた芹沢さん達に、近藤さん達は黙って冷ややかな視線を送った。
「……なんだ?」
勘がするどい芹沢さん。
何か文句あるのか?と言わんばかりのドスのきいた声で尋ねてきた。
あぁ…芹沢さんのあの顔…
あの眼……
その殺気を放つ鋭い眼に思わずゴクリと喉を鳴らす。
…これは一悶着あるかもしれない。
「芹沢先生…」
「近藤さん。ここは俺が」
呟くような声を出した近藤さんを制し、歳さんが口を開く。
「芹沢さん。あんた、今回の大和屋焼討はどういうつもりで…」
「ほう。副長の分際で局長の俺に意見とは。偉くなったもんだな、土方先生?」
嘲笑を浮かべ、盃を煽る芹沢さん。
だけど、彼の左手には外したはずの刀がしっかりと握られているのを見て、思わず眉間にシワを寄せる。
まさかこのオッサン、歳さんに気に入らないことを言われたらバッサリやるつもりじゃ…
そんな事を思っていると、私が座る列の上座からカチャリと刀の鯉口がきられる音が部屋に響き渡った。
…え?
その場にいた者すべての視線がそちらに注がれる。
「芹沢さん。人と話す時は刀から手を離した方がいい。もしあんたが刀を抜くようなことがあれば、俺は迷うことなくあんたを斬る」
殺気を含めた強い口調でそう言い放ったのは…
「……斎藤。餓鬼の分際でたいそれた口の聞き方だな」
「刀をしまえッ!やれ、抜く気かッ!!」
「生意気な糞餓鬼めッ!!」
芹沢門下の人達からは怒号が飛び、皆、一斉に刀に手をかけ立ち上がる。
「ちょっ…やめ…!!」
そう言った私の身体は瞬時にスラリとした背中に守られた。
「由香さん。下がっていて」
それは修羅の如く、ゾクリとするような殺気を纏った総司くんだった。
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