壬生狼と過ごした2217日

□能ある鷹は爪を隠す
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「あれ?もしかして…」


昼ご飯を食べ、部屋でくつろいでいれば、遠くで季節外れの雷が鳴っているのが耳に届いた。こんな時期に雷なんて…江戸時代では普通のことなのか。それとも何かとんでもないことでも起きるんじゃないか。そんなことを予感させる昼下がり。


「由香さーん、います?」


などと若干2時間サスペンスドラマの主人公になりきった感でたそがれてみれば、襖の向こうから雰囲気ぶち壊しのルンルンとした声が聞こえた。お、この声は…


「いるよー、総司くん」

「失礼します」


そう言ってスッと開いた襖から、やはりニコニコ笑顔の総司くんが顔を覗かせた。
彼がこんな表情で私の部屋を訪ねてくる時はいつも理由が同じ。ほら、その手には予想通り…


「さっきの巡察でお団子買ってきたんです。一緒にどうですか?」


慣れない生活の私に彼なりの気遣いをしてくれているのだろう。こうしてちょくちょく甘味を持っては私の部屋を訪ねてきてくれる。


「ありがとう!食べる食べる〜」


ぶっちゃけそんな彼の優しさに、嬉しさ9割。最近腹回りが気になる1割なんだけどね。まぁ、毎晩のように皆の酒を呑みまくっている私も悪いんだけど。ああ、体重計よ、お前もタイムスリップしてこい。なんて。


「焼き団子とあんこ、どちらがいいですか?美味しそうなんで二つとも買っちゃったんです」

「じゃあ両方半分こしようよ!」


美味しそうなお団子を横目にさっさとお茶の準備をする。現代のお団子ももちろん美味しいけど、江戸時代のお団子もなかなかのもんだ。
それにケーキやらがないこの時代にとってお団子は私にとっては大好きなスイーツだったりするのだ。
さぁ、盛大に頂こう!…なんて言ってるから太る一方なんだぜ。


「…あれ?ねぇ、この焼き団子って」

「あ、わかりました?それ、甘くないんです」


生醤油つけて焼いてあるんですよ。
そう言って焼き団子の串を美味しそうに頬張る総司くん。
お団子といえばみたらしやあんこ。甘いものしかないと思っていた私はその生醤油の香りに思わず目を丸くした。


「ちょー美味しいじゃん!」

「ちょー??」


笑みを浮かべながらも首を傾げ、再びお団子を頬張る総司くん。
おや、かわゆいのうなんて思いながらもそれに構わず、こりゃ、酒のつまみになるかもなんて焼き団子にかぶりつく私は色気より食い気という言葉がぴったり。やっぱりダイエットとか無理なんだと思います、はい。




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