小説(自称)
□サイダーガール
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「でさ、話変わるけど
今から帰るなら一緒帰ろうぜ?その傘で。」
そんな俺の気持ちを知るはずもない淳は、短い髪を掻きむしり俺の手にある傘を指差した。
「なんだよ、共犯じゃねぇか。
つか、相合い傘はごめんだぜ?」
「えー。
ゆたくんのケチ!」
「誰がゆたくんだ。
ほら、帰るぞ!」
「はーい」
「女子らない!」
「女子らないって(笑)!
てか豊、俺ら話してる間にさ雨、小雨になってない?」
「うわ、マジだ。
ならもう走って帰ろうぜ?」
「手を繋いで、ね☆」
「なんだよ、今日のそのキャラ。」
適当な返しはいつものことだが
ここまでしつこく同じような返しはしない。
高い確率で喧嘩になるからだ。
腕っぷしじゃもちろん敵わないが、口喧嘩なら俺の方が何枚も上手だ。
だから、淳はしつこくは言わない。
…はずだったんだが。
「だってさ…」
淳が口ごもった。
(…なんだ?
つか、知ってるか?
俺らまだ学校の入り口で話してんだぜ?もうそろそろ帰ろうよ)
「だって
顔はそこそこまぁイケメン?なのに、背は低い、運動音痴、勉強も英語だけずば抜けてよくてあとは全滅に相応しい、豊がよ?
水族館で魚見て『美味そう』って言った、あの豊がよ?ラブレター貰うなんて、なんかもう嬉しい通り越してショック!」
長々と人の悪口を言うなんていい度胸してんなと思った矢先…
「待て、淳。
なんでラブレター貰ったの知ってんだ?」
そう。
俺は見せてない、話してない、はずなんだけど。
「ま、立ち話もなんだし、走りながら話すのもなんだし、あ!俺、バーガー食いてぇなぁ。豊の奢りでバーガー食いてぇなー。」
うまいこと淳に乗せられた気もするが、この話を他の奴らに聞かれるのも嫌だ。
答えはひとつ。
「しょうがねぇなぁ。行くか、バーガー小北」
「えぇ?!そこはワックバーガーでしょ!!」
「文句言うなら割り勘!!」
「身長も器も小さいな」
「悪かったな!」
バーガー小北へ俺らは直行した。