short

□ファーストキス
1ページ/4ページ

今日は久々に部活が休み。
そこで、忍足謙也は恋人である財前光に家でゆったりしないか、と提案した。
なかなか二人きりになれる機会は少ないので
光も嬉しそうに行きます、と返事をしてくれた。


家から出る気もないのに新しい服を着てみたり、いつもより髪型を気にしてしまうのは
ただただ光が好きだからだろう。


「よっしゃ、準備万端や!」
謙也がそう言ったのは午前9時すぎ。
光が来るのは10時なので1時間近く暇がある。
掃除のやり残しはないか、とかおやつの準備のできてるか、とか
もう3回は確認したかもしれない。





謙也は思春期真っ只中。
そろそろ手を繋ぐ以上も経験したいと思うのは当たり前だ。
家でゆっくりなんてできるのだろうか、と若干不安にもなる。
光とあんな事やこんな事・・・と想像するだけで顔がにやけてしまう。

付き合いはじめて1か月。
もうキスをしてもいい頃か。
したい!そうだ!今日キスをしよう!




会話が途切れ、みつめあう。
部屋には二人。上目遣いの光と真面目な顔つきの俺。
どちらともなく近づき、目を瞑り、触れ合う唇。

完璧や・・・っ!
いける!!


シュミレーションという名の妄想を繰り広げていると不意に


ピンポーン


と音がした。
いつのまに1時間経ったのか、と驚く。
妄想はすごい、と思った。



玄関を開けるともちろん愛しの財前光。

「こんにちは、謙也さん。」


今日の光はいつもより可愛らしく見える。
久々の二人きりということで財前の方も嬉しいのだろう。

「ジュースもって来るから先に部屋行っといてや」
と謙也が言うと財前ははーい、と返事をして謙也の部屋へ向かった。
心なしか階段を上る足音は軽く聞こえるし、鼻歌も聞こえた。


可愛い可愛い可愛い!!!

無意識に顔の筋肉が綻んでしまう。


急いでコップにジュースを注ぎ、部屋まで駆け上がった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ