日常。
□幼き日
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アリスが、泣いてやってきた。
もはやいつもの事だが不思議の国の住人にしてみれば
常に大事件扱いである。
「セツナ……セツナ、どこ?」
ひっく、と泣きながら花のなかを歩き回る。
他の住人が心配して声を掛けてもそっちのけである。
と。
「セツナ!」
花畑の中に、見慣れた黒髪を見つけた。
アリスの声が聞こえないのか、楽しげに花を摘んでいるらしい。
「セツナ!!!!!!」
もう一度、大きな声で呼んでみた。
すると、見慣れた黄色がこちらを見つめる。
『ありす!』
ぱあ、と顔が輝いたセツナは、しかしすぐに眉をひそめた。
『また、ないてるのね?
どうしたの?また、つらいめにあったの?』
優しいその声に、更に涙が溢れる。
『おいで、わたしのありす!』
腕を広げ、にっこり笑う少女に
アリスは抱きついて、ひとしきり泣いた。