うたぷり 短編

□あだになる
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 自室。
今日は真斗ではなく、翔がここにいる。
真斗はどうやら泊まりのロケらしく、明日の夜まで帰ってこないという。
だから、翔をここに呼んだというわけだ。

 彼は、ソファに座り、楽しそうにテレビを見ている。
本当はもっと恋人らしいことがしたいのだが、翔の笑顔が可愛いから良しとしよう。
しかし、やはりずっとテレビを見ているだけではツマラナイ。
「ねぇ、おチビちゃん」
「チビって言うなっていってんだろ!」
テレビに夢中だった彼も、さすがにこの発言は聞き逃さないようだ。
ふと、彼に初めてそう呼んだ日を思い出す。小さくて可愛らしい彼に一目惚れをしたあの日。
どうにか話す機会が欲しくてつい言ったからかいの言葉。
あの時は、こんな関係に至れることを想像もしていなかった。
ムキになって怒る彼は、今も昔も可愛らしい。
だが、もっと可愛い姿を見てみたいのも事実。
そっと、彼を押し倒してみる。
「―え?」
突然の行為に驚きを隠せないらしい彼の表情も実に良い。
その間に、テレビを手早くリモコンで消し、正に準備は万端だった。
「別に逃げてもいいんだよ?おチビちゃん」
余裕たっぷりの笑顔で彼を挑発する。
「―別にいいぜ。来いよ」
「フッ…男気だねぇ」
言葉だけ聞けば男らしいが、彼が少し怖がっていえるのは、強張った表情から丸分かりだった。
しかし、決してやめたりしない。
それは、翔にとっても嫌なことだろうから。
「後悔しても知らないからね」
彼はまっすぐに俺を見つめている。

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