うたぷり 短編

□Dependence
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「あなただけ、愛してるんですよ」

そうあなたが囁いてるのも、聞こえないふりをした。
どこまでも優しいあなたに甘えてしまったら、わたしはもっと弱くなってしまう。
それくらい、馬鹿な自分にもわかっていた。


「別れる、なんて悲しいこと言わないで下さい。私たちは愛し合っているじゃないですか」
それだけじゃダメなのだ。
ただ愛し合っているだけでは。
これ以上、迷惑などかけたくない。
彼は人気アイドル、わたしはただの会社員。
しかも特別可愛いわけでもなく、性格別段いいわけでもない。
どこから見ても、つり合っていないのだ。
付き合う前からそれは分かっていたことだったけれど、そのときはまだ盲目的で好きだからいいと、そう思っていた。
「もう、いいんだよ・・・。今までトキヤと一緒にいれて幸せだった。それだけで、充分だよ」
「私は充分なんかじゃありません!これからも、死ぬまで、私はあなたと居たいと思っている。いや、いるんです!」
彼の顔は今まで見たことないほど必死で、普段の冷静な姿が嘘のようだった。
ああ、ダメだ。
また絆されて、甘えて、離れられなくなってしまう。
「私から離れる必要なんてないんです。どうして分からないんですか・・・」
分からないよ。こんな私なんかを好きになるなんてそんな。
「きっとあなたのことですから、どうして私なんかと思っているのでしょう?
あなたが気づいていないだけで、あなたは魅力でいっぱいなんですよ。だから、私はこんなに夢中なんです。離れたくないんです」
そう言ってわたしを優しく丁寧に抱き締めた。
高鳴る心臓がばれてしまいそうで、怖い。
「・・・好きです。だから、別れるなんて言わないで下さい」
そうして、彼の顔が近づいて唇が触れあった。
「・・・ばか」



だからわたしは離れらない。

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