総悟受
□桜の下には
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たまに、紅くみえる眼。茶色と黒の毛並み。アイツが、狂い咲き桜の下で死んでから丁度1ヶ月後に現れたこの猫。
名前はソウ。総悟の、ソウだ。
みんなの前では俺に近寄らないし、近寄ったら逃げるか引っ掻く。なのに、みんながいないと俺に甘えてくる。
そんな性格がアイツみたいで。気がついたら、俺はソウとアイツを重ねてた。
[桜の木に]
縁側に腰かけて日に当たってると、ソウが俺の膝に乗っかってきた。
俺は煙草をくわえながら、灰がおちないように気をつけてソウをなでる。ソウは気持ちよさそうに眼を閉じていた。
そして、しばらくすると俺の膝からおり、俺をみて一回だけ鳴いた。そのまま、その場から立ち去った。
その次の日も、また次の日も。ソウは帰ってこなかった。
しばらくして、帰ってきたがよかったがすっかり衰弱していた。
「ソウっ!?」
周りには山崎とかもいるのに、ソウは俺にすり寄ってきた。
「大丈夫か?」
ソウは口をあけて鳴こうとしてたが、鳴き声がきこえない。衰弱して、エサもたべない。
そして、三日後。
俺の腕の中でソウは息絶えた。
息絶える瞬間、ソウはまるで甘えてくるかのように鳴いた。その鳴き声が、俺を呼んでるようで。
そして、気がついた。
ソウが死んだ日が。
総悟が死んだ4ヶ月後だって。
ソウの死体は、屯所の桜の木の下に埋めた。
その桜は、春に咲かなくなった。
かならず、雪の降る季節に咲くようになった。
『土方さん』
狂い咲き桜の前には、いつでも愛しい君と猫がいる。