総悟受
□愛しい人
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やめて。とかいってもなにも聞いてもらえなかった。ただただ、殴られるだけだった。鉄の味がする。やめて。とかいってみるが、毎日のことで、心のどこかでは無駄だと知っていた。
とんでくる痛みに目を瞑る。
カハッと、血が口から流れそうになる。
どんな顔してこの人は俺を殴ってるのだろうか。とか思った。笑ってるんだろうか。
殴られながらも、目をひらいてみた。あ、れ?
なんですかィ、その顔。情けねぇ。なんでそんな、泣きそうな顔。
まるで親に見捨てられた子供のような顔をしてるから。
殴られた痛みま忘れて土方さんを抱き締めた。肩にのっけられた土方さんの顔が震えて、肩が濡れてゆくのがわかった。
「…っ…ごめっ、総悟、ごめんっ…」
俺の背中にまわした手で力強く俺にすがりつきながら謝る土方さん。…この人はきっと、ずっと後悔してたんだ。
「…俺、総悟がっ…総悟が離れてくのが、こわくてっ…」
あまりにも愛しくて。
「…大丈夫でさぁ。俺はずっと一緒ですぜ」
だから泣かないで。震えないで、脅えないで。
俺はあんたの笑顔が好きなんです。だから笑って。愛しい人